こんにちは。渡辺菊眞です。
激烈な暑さの8月が終わり、9月になって、猛烈な暴風雨が通り過ぎ、ようやく秋がやってきました。涼やかな風の吹く気持ちのいい季節です。
さて、少し前のお話になりますが、4月27日から展示がはじまった「内臓感覚 遠クテ近イ生ノ声」(金沢21世紀美術館)が9月1日をもって閉幕となりました。

最終日も多くのお客さんが訪れ、小さな読書室ではめいめいのリズムで長新太さんの絵本の世界にはいっているようでした。

最後の日の閉館直前。夕暮れ時となって、お客さんもほとんどいなくなり、ガラス越しにポツンとある「双隧の間」もなんだか寂しそうです。
一夜明けて、感慨に浸る間もなく、解体です。

設営時にサポートしていただいた金沢美大の彫刻科のお二人に今回も手伝っていただきました。

タイで「天翔る方舟」を完成させたばかりの片岡くん(D研究所)も解体にかけつけました。

設営には高知工科大学の渡辺研究室の院生3名を含む、計7名で5日かかったのですが、解体は猛烈なスピードで終わり、3時間で(!)で完了。感慨もへったくれもない早さです。

今回で不要となる角材とコンパネは、金沢美大に引き取られ、

今後使う予定の11基の「A型断面」部材は、奈良にトラックで運び込まれました。
今後の「A型断面」ですが、「大和の望楼プロジェクト」(仮称)に組み込まれる予定です。この組み込みは、「双隧の間」の設営完了後、しばらくして思い浮かんだことです。プロジェクトそのものはもっと前から浮上していたのですが、その時は特にこんな予定はありませんでした。
新潟の「産泥神社」(水と土の芸術祭2012)は、完全に解体され、

その後、何もなくなった敷地には幽霊のような「影」が残りました。

移築のきかない土嚢建築なので、やむを得ないとはいえ、どこかやるせない気持ちが残ったのも事実です。
今回は軽い木材、簡単に移築できます。文脈が変わった中で蘇るカタチ、そんな構想がふつふつと湧いてきたのです。
こんなわけで、「望楼」の設計はとても奇妙なプロセスを経ました。「A型断面」はインテリアとしては十分な強度がありますが、野外の構築物としては脆弱です。なので、構造材ではない部材としてはめ込まれることになります。にもかかわらず、これをはめ込む骨格は、このカタチを基準に設計されるのです。位置づけとしてはマイナーな非構造部材(=「A型断面」)が、メジャーな構造材(=「大和の望楼」)に生命を与えるのです。普通はありえないような不思議な順序の形態決定法です。

そんなこんなで、苦心しながら、なんとか望楼の架構を決定。

まだまだ荒っぽいですが、屋根がついたときの様相です。なんだが空にこぎ出す古代の軍艦のようになっています。
解体を終えて、奈良の地に運ばれた11基の「A型断面」。現在は、来るべき再生の時を待っています。このプロジェクト、まだまだこれからですが、また進捗あり次第、報告いたします。
それでは、今回はこの辺で。