あけましておめでとうございます。渡辺菊眞です。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
毎年元旦に同じことをいっていますが、D研究所は2007年1月1日に開設いたしました。というわけで、本日で開設からちょうど9年目を迎えようとしています。あと1年で早10年。月日が立つことの早さを改めて感じています。

昨年ですが、タイ国境の孤児院兼学校「虹の学校」学舎、「天翔る方舟 School floating in the Sky」が幾つかの国際コンペで表彰され、それに伴い6月はカナダ、11月にはイギリスへと受賞式に赴きました。こういう受賞をきっかけに、この学校の存在をたくさんの方々に知ってもらうことで、まだまだ運営が厳しいこの学校、そしてここで生活している子供たちへ、なにがしかのよいことがもたらされてくれればと願っています。
さて、今年はというと、幾つかのプロジェクトが進行中です。
まずは、奈良県平群町に建設中の「宙地の間」。これは日時計が内蔵されたpassive solar houseであり、2008年から構想を始めたものです。実に7年の歳月を経て、今年ようやくカタチになります。この建築は小生の自邸かつ、D研究所を兼ねます。

完成のあかつきには、宇宙的存在である太陽の巡りを感じながら、生活しつつ、D研究所本部としてメンバーが設計業務を進めていくことができます。完成は6月末くらいを予定しています。
次は「土嚢の宿の覆屋」。これは高知工科大学、渡辺菊眞研究室のプロジェクトではありますが、小生含め、D研究所の片岡くんも、現場を指揮し、学生とともにつくりあげるものです。日本型の土嚢建築の雛形としての意味をもちうるものとして建設を進めています。このプロジェクトのポイントは現場で逐一、光の入り方を含めた空間の在り方を確認しながら、その都度、変更修正をしつつ作り上げていく点です。基本図面だけがあり、あとは現場で判断という作り方です。学生たちと思考錯誤しながら、妥協なくよりよい空間を作り上げたいと思っています。

この建築は完成した空間だけが意味を持つわけではなく、それまでに展開される建設風景が大切だと考えています。日々姿を変えていく現場の風景が、この敷地が立地する神母木(いげのき)という小さな町に、刺激と活気を与え、何かワクワクする場を形成できると感じています。完成すれば村の行灯のように、夜の漆黒に不思議な明かりを灯す存在になるものと願っています。
最後は、タイの虹の学校の新施設です。具体的には浴場を計画します。虹の学校があるサンクラブリは日中はとても暑いのですが、日が落ち始めると急速に冷え込みます。現在、そのなかで震えながら水を浴びるのですが、これはなかなかにつらいものがあります。そこで、「ここにしかないような浴場を計画して欲しい」という依頼をNPO「輝くいのち」代表の玉城秀大さんからいただきました。薪をつかって風呂をわかす装置を含め、それを覆う心休まる空間を目下構想中です。
というわけで、今年は幾つかのプロジェクトが同時進行いたします。これまで、さまざまな国で建設を進めてきましたが、どの場所でも、それが故郷であると思いながら、空間をつくりあげてきました。たとえ、アフリカでも西アジアでも、そして日本でも、そこにある身近な場所をとても大切に思いながら、なおかつそれを超える広大な宇宙や内面の心的宇宙の深みへと思いを馳せることができる場所をこれからも作り上げていきたいと思っています。
「すぐこことはるかかなたをつなぐ」
今年もD研究所をどうぞよろしくお願いいたします。
D環境造形システム研究所 代表 渡辺菊眞