2008年07月03日

コルビュジェをハメル。

 こんにちは。渡辺菊眞です。

 去る6月28日に「三巨匠を場所にハメル。」即日設計ワークショップが彦根にて開催されました。今回は第二回目、お題は「コルビュジェをハメよ。」です。

 彦根市の具体的な場所にコルビュジェのサヴォア邸をハメるわけです。というわけで、まずは敷地調査。

sikichi.jpg

 今回の敷地は旧武家町の町家の並ぶ一画。上の写真の背の低い町家と奥の町家の間にあいた隙間が敷地となります。早速奥にはいっていきます。

sikichi-hearing.jpg

 手前には鉄骨のガレージがありますが、その奥にヴォイドがあり、

gyoja-zo.jpg

 緑が植えられたさらに奥に、役行者像を祀る祠があります。この祠を所有されている住民の方にお話をうかがうと、ここは彦根城の「裏鬼門」にあたる場所とのこと。かつては大きな屋敷があり、その屋根裏には密偵が控えていたそうです。そのころから安置されていた行者像ということで、現在はかつてあった祠を移動させて、ややその位置を変えてはいるものの、城下町:彦根にとって、極めて重要なポイントであったわけです。

gairo-kagigata.jpg

 この祠へ至るヴォイドの前面道路はすぐ横で鈎の手に折れ曲がります。この屈折は彦根城の堀の屈折が同心円状に街路に影響を与えて形成されるもので、この不連続点も、この敷地をめぐる特性として大きなものとなります。

hikone.jpg

 この屈折点のすぐ向こうには彦根城が見えます。というわけで、今回の敷地では、
1、祠へ至るヴォイドを、参道として、いかにうまく作れるか。
2、街路の屈折という特質を計画に反映させることが可能か。
3、彦根城の裏鬼門という特質を効果的に計画に反映させることは可能か。
などに、おのずと問題点が絞られてきます。

seisaku.jpg

 これらのことの解決法をおのおの頭に描きながら、早速、会場に戻って、制作を開始します。6時間の長丁場です。

 とっても長く、けど時間がやはり足りなくなるそんな怒濤の制作を終えて(その風景は割愛)、

sakuhin02.jpg

 何とか造り上げた作品を中央卓上に並べます。

hihyo02.jpg
hyoten.jpg

 この後は、各自数分間のプレゼンをして、相互批評に入ります。

 この流れは前回の「ミース編」と同じです。

 さて、コルビュジェをハメてみて、改めて見えてきた彼の作品(少なくともサヴォア邸の)特性が見えてきます。今回の敷地も狭いので、サヴォア邸は当然、そのまま入りません。奥行き方向は収まるものの、幅は約1/3。よって、平面を削って、上に積むなどの操作が必要となります。

 しかし、前回のミースと違って、サヴォア邸はきわめて切断するポイントを見極めるのが難しいのです(逆にミースは「切断おすすめ線」が明瞭に見えていました)。というのも、ひとつずつは明確に完結した形態やシステムを有しているものの、それらを複数重ねることで、互いの完結性が不能になり、それぞれの要素間に自己完結を阻む奇妙な「ズレ」が生じているからです(その「ズレ」こそに表現の秘密がある)。そして、その「ズレ」が連続的に生起することで意外性に富んだ魅力ある空間を生み出されています。一見、3層ごとに、そして平面の部分ごとに明瞭に分節可能にみえて、空間は蛇のように連続的につながっています。詐術にも見える巧みな空間操作がそこにはあります。

 ですので、そこに、切断はじめ、細々とした操作を施すと、それがやけに陳腐なものと化すのです。これには、みなさん苦しめられたようです。いろいろ施しても、「窮屈なサヴォア」しか生み出せないような状態が迫ってきます。

 さらに、裏鬼門や、祠の参道、街路の屈折といった敷地特性とクロスさせて発見性ある全体空間を形成しなきゃいけません。

 かなり、厳しい戦いとなったのですが、それでも戦い終えて、やっと見えてきたこともたくさん出てきました。ここではそれに関しては述べませんが、その見えてきたことをもとに、再度、作品を練り直していく作業が今後、各自に残されるわけです。この夏の間に次回の「ライトをハメる。」を含めた作品が完成形として提出されます。

 その時また、それぞれが完成した姿を報告できたらと思います。

posted by 渡辺菊眞 at 21:15| Comment(0) | TrackBack(0) | Diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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