黒い研究員:江崎とともにヨルダン入りしてから早くも10日あまりが過ぎてしまいました。この間、施設建設に向けてさまざまな準備をしてまいりましたが、そんな準備のうち、今回は石造建築視察についてお伝えします。
2007年2月にも僕は現地視察を行い、ヨルダン国内を縦断して4〜5村を巡って石造住居調査を行いましたが、そのときは実際に住居として使用されている石造住居は一軒しか見つからず、その他はすべて廃墟と化してしまってました。
今回はフフェイスというヨルダン古都:サルト近郊の村を視察。何でも現在でも居住している石造住居が散見できるとのこと。この生きた住居を実見するのが今回の視察の目的のひとつです。また一口に石造といっても素材や工法を含めてさまざまな種類があり、今回はどんな材料でどんな工法を採用するかも考えねばなりません。それを決定するための視察でもあります。

フフェイスに到着。まず最初に見つけたのがこれ。この建物は倉庫に使われているようです。切り石ではなくナチュラルストーンを主として壁を積み上げています。角部には比較的大きな整形の石で固めてあるのがわかります。屋根はH型鋼を壁上部にかけわたしてその上にコンクリート床板をのせています。当地石造住居に典型的なものです。

これは実際に居住している石造住居です。20年前くらいに建てたものだそうです。
20年前。そうこれを建てた石工さんはまだ存命しておられるとのことです。難航しそうであった石工さん探しににわかに光明がさします。

これは2年前にもよく見た廃墟の石造住居。石積み、アーチとも奇麗です。研修施設の壁も基本的にはこの線を目指したいということになりました。ちなみにここまで見てきた石造住居の壁厚はだいだい80センチ程度です。これもひとつの目安になります。

久しぶりに見た、「アーチのみ残存」。僕は懐かしいですが、江崎は初見。かなり驚いていました。

村のところどころで、石垣を新たに築いているのを発見。それを見ると上の写真にように大きな石は外側のみで壁内部にはクレイとセメント、小さな礫で埋められてます。すべて大きな石で構成されていると思い込んでいた石壁ですが、このように内部はクレイと礫を主体としたものが埋め込まれているのかもしれません。これに関しては、その真偽のほどを確かめねばなりません。
さて、この後は村を離れてアズラック地方(砂漠のある地方)へ。8世紀ウマイヤ朝時代の遺跡カスルアムラへと向かいます。

この建築は以前から本でプランなどについて知っており、たいへん興味を持っていたものです。小さな建築ではありますが、その構成はなかなかに複雑でその内部空間の質などを実見したいとかねてから考えていました。今回、ようやくここを見ることができ、正直感無量です。屋根としては最も華やかなドーム部分を低く抑え、逆に三連ヴォールトを一番高い位置へと持ち上げるという外部ヴォリューム構成は簡単そうでなかなかできることではありません。この構成によってか気品ある外観となってます。

さて、その内部空間ですが、小ささを感じさせないほどダイナミックです。アーチ壁とそれに直交する方向のリズミカルな三連ヴォールトが空間に律動感を与えています。それでいて静謐でもあり、とても魅力があります。

さて、この遺跡内で壊れて断面が露出した壁を発見。やはり壁内部は比較的小さい礫とクレイが詰められてます。農村でも見たこの工法、実は1200年もの長きにわたって、この地で採用されてきたものであったことが確認できました。研修施設の壁もこの工法にて建造することを江崎ともどもこの時点で決めてしまいました。

生きた石造住居を見れたこと、積まれた石のサイズを確認できたこと、壁を作る工法を確認できたこと、石による優れた空間の在り方を見ることができたことなど、とても実りある視察となりました。これをもとに、持ち込んできた設計案を練り直すことになりました。
というわけで今回は石造建築の視察報告でした。

