早いものでもう6月。梅雨の動向はわかりませんが、高知は雨や曇りの日が多いです。
晴れるときは日差しが強烈なのですが。
さて、今回は先月半ばに出版された井上昭夫編「ユートエコトピア」という本について紹介したいと思います。
井上昭夫氏は天理大学教授であり、当方が土嚢建築にたずさわるきっかけを作ってくださり、その後、氏を筆頭とする天理大学と共同で世界各地で土嚢建築を通した国際協力プロジェクトをいっしょに展開させていただいた恩師ともいうべき人です。氏と共同との土嚢建築プロジェクトももう今年で10年になります。
この本では、そんな土嚢プロジェクトはもちろんのこと、氏がそれ以前から持続的に取り組まれてきた地球環境改善活動の軌跡と、その思想、そして氏が関わってきたさまざまな分野の著名な研究者や作家によるユートピアへ向けた世界、宇宙、人間に対する深い洞察がまとめられています。ちなみに下図は「生態環境都市」を唱えアリゾナの地でユートピア実現に向けて飽くなき挑戦を続けている建築家:パオロ・ソレリが描いたアーコサンティーと、宇宙船モデルです。井上氏は90歳を超えてなお挑戦を続けるソレリに今春、アリゾナまで訪れ、会談しています。このほか心理学の分野では河合隼雄氏が執筆しているのをはじめ、本当に興味深い論考が綴られています。
小生もこの本の第四章の一節を執筆しています。題して「「泥曼荼羅」の展開と深化ーユートエコトピアのカタチまで」です。小生がはじめて手がけた土嚢建築:「2001年インド西部大地震の復興住居モデル」設計の時点をスタートに、住居が曼荼羅状に複合した集落計画の重要性に気付いたエピソード、そして、それをアフガン、アフリカを経て進化させてきた過程がつづられています。
上図はアフリカ泥曼荼羅に仕込まれたカタチの仕組みの解説です。
そしてこれは東アフリカエコビレッジ建設を経て、次なるステージへと進んだ「ユートエコトピア」の集落モデルです。その詳細はここでは述べませんが、「癒しのカタチ」である曼荼羅が、住居スケールから集落スケール、そして集落共同体スケールにわたって入れ子構成になっています。人が住む最小限単位である家でも、家が集まる集落でも、集落が集まった大きな単位でも、そこにいる人々がやすらい癒される空間となれるよう計画しています。
現在、D研究所では建設完了に向かいつつあるヨルダンコミュニティセンターをはじめ、昨年から続いている東アフリカエコビレッジ建設、そして今年の夏からはじまるユートエコトピアモデル建設と、大きな動きのなかで活動しています。
そのそれぞれが、当地の未来に花を咲かせる種子になってくれることを願っています。
またそれぞれの活動は動きがあり次第、報告いたします。