今日の高知は朝から土砂降りです。土砂降りが持続力を持つのが「高知雨」なことが最近になってわかってきました。
さて、今回は先日天理大学でおこなった土嚢建築研修についてと、そこでぼんやり考えたことなんかをお伝えいたします。

現場はここ。天理エコモデル・デザインニングセンター02。2008年のウガンダ渡航前におこなった土嚢建築研修の場所です。
今回は、高知での日本型「土嚢のいえ」モデル建設、そして金沢21世紀美術館での高嶺格氏による「いい家、よい体」の「いい家」(=土嚢建築を主としたインスタレーション)建設
に向けての研修となります。
研修の講師は河口尊さん。小生、土嚢建築にたずさわって今年で10年になりますが、その10年間ずっとパートナーを組んできた盟友とも呼べる方です。土嚢建築に出会ったのはふたり同時で、土嚢にさわりはじめたのも同時なのですが、プロジェクトをこなすうちに河口さんは土嚢建築施工技術者として、小生は土嚢建築設計+施工管理者として、専門が分化してきました。10年という節目の年に改めて土嚢をいちから積み直そうという思いがあって、個人的にはそんなことを考えての研修でもあったわけです。
参加したのは小生と、高知のD工房・工房長の片岡佑介氏、そして高知工科大学渡辺菊眞研究室の院生、寺本くんと小松さんです。

まずは円弧状に土嚢を積んでいくオーソドックスな土嚢積みを鍛錬していきます。僕を除くと片岡氏、院生ふたりとも土嚢を積むのはほぼはじめてです。この基本をまずは覚えていかねばなりません。

それを終えるとアーチ研修に移行。

アーチトップのキーストーンをうめこんで、

見事なアーチが描かれます。アーチの向こう側には河口さんの姿が見えます。
土嚢は組積造の一種です。そこからできる造形は大きくはアーチ、ヴォールト、ドームの三種に絞られます。そして原則的におなじブロックをひとつずつ丹念に積み重ねて全体を形成します。力の受け方は部位によって違うものの基本的に同じ単位をどんどん加算していくという気の遠くなる作業です。

唐突ですが、これは研修の帰りによった東大寺南大門。大仏様の傑作です。貫が頭上をビュンビュン飛びまくります。多種多様な線材を架け渡して作り上げる空間。土嚢建築とはあまりにも懸け離れた構造方式です。
これら木造建築を支える原風景は「深い森の中」であるのは確かでしょう。
一方、組積造のドームやアーチは洞窟空間が原型にありそうです。
そういうと森を抽象化して木の線材で森を再現することや、石の積み重ねて洞窟的空間を再現することは奇異ではなくしごく当然にようにも見えます。
しかし、その一方で西洋のゴッシク教会堂は石造建築でありながら、その原風景は「深い森の中」です。それゆえ石造なのにもはや石は石に見えず線材のごとき振る舞いを見せます。かといってそれはあくまで石なのです。これはとっても脅威的です。ある意味、狂気ともいえるかもしれません。
小生は日本人ですので木造文化圏の人間です。「深い森」を線材で表現する側の人間なのですが、ひょんなことから土嚢建築をやることになり、異なった文化圏でそれを建ててきてもいます。この激しく引き裂かれるような異様といえる制作様態が、なにものかを生んではくれないか?そんなことを思っていたりします。
10年振りにいちから土嚢を積み直して、故郷で巨大木造建築を仰ぎ見て、そんなことを考えていました。