高知に戻ってきて数日たつのですが、土嚢疲れがまだとれきれず、体の芯がだるい日々が続いています。
早く疲労をぬききりたいものです。
さて、今回から幾度かに分けて「Good House いい家」製作にまつわる裏話を外伝として報告したいと思います。
具体的な作業風景に関してはD工房blog、「Dの日だまり日記」にて報告される予定です。今回は外伝の第一話として土にまつわるお話です。
土嚢建築は現地の土を袋につめて積み上げて作る建築です。この結果できた土嚢ドームは「盛り上がった第2の大地」といえます。そして土を提供した大地は当然窪みます。D研究所では、土嚢建築を考える時に「盛り上がった大地」だけでなく、この「窪んだ大地」も等価なものと考えています。「盛り上がった大地」と「窪んだ大地」は土嚢建築の正と負、陽と陰で、互いに切っても切れない関係なのです。
では、今回はどうかというと、「現地の土」の現地とは金沢21世紀美術館となってしまいます。美術館の敷地を掘ることになるわけです。4月に事前打ち合わせにきたときに、轟沈覚悟で美術館の方におうかがいしました「掘っていいですか?」。
当然ながら「駄目です」のお返事。はい、轟沈。
ただ、間接的でもいいから、どうあっても「窪んだ大地」が来場者に感じられるようになって欲しいという願いは消えませんでした。
というわけで、採取場の写真だけでもどこかに展示したいと提案したところ、これに関しては「そうすべきだ」という共感を得ることができました。
こういう流れの中、今回の作業中の一日を採取場見学にあてることができたわけです。

今回の土は美術館から車で30分くらいの距離にある森本という地区で採取されたものです。土はとてもきめの細かい山砂。土嚢建築をつくるにはこれ以上ないような土です。上はその採取場の写真。ピラミッドのように幾何学的に屹立する崖とその上部で鮮やかにコントラストをなす樹々。


掘られて「窪んだ大地」からは、また草が芽吹きます。この窪みの土が美術館に運ばれて、土嚢の家へと変容していくわけです。

重機で掘り返された土を人力でドーム建築にするわけですから、そこにはすさまじいエネルギーが投入されることになります。

この、採取場の写真、採取された土とともに、展示場の一角で披露されてます。(やっすーい)アルミサッシの扉(!)を開けると、そこに静かに佇んでいます。この設置場所、二転三転してようやくここにおさまりました。状況に応じてカタチがどんどん変化するそんな「いい家」製作現場の在り方をよく示す例のひとつです。
というわけで、今回は「窪んだ大地」のお話でした。