先日、金沢から高知へ戻ってきました。金沢は雨が多くかなり肌寒かったです。雨で煙ってグレーにしずむ風景がずっと広がっていました。高知に帰ってくると、こちらも完全に秋になってましたが、北陸とちがって色彩鮮やかで、日本海側がルーツの小生でも色があるのはいいものだと感じてしまいました。
さて、今回は高嶺格「Good house Nice Body-いい家 よい体-」の第二章「いい家」第二期制作についてご報告します。具体的な制作模様については、「Dのひだまり日記」で詳しく報じられてますので、ここでは少し違った視点からの報告にしたいと思います。
8月の制作では、ヨルダンかと錯覚するぐらいの猛暑だったのですが、金沢はすっかり秋になっていました。
上の写真は第一期の完成時のもの。今回はというと、
このように土嚢建築の増殖が見られます。今回の増殖のメインは写真にある、土嚢ヴォールト(連結アーチ)屋根の制作です。土嚢建築は組積造ですから、アーチ、ヴォールト、ドームの3種の造形が要となります。ということで前回のドーム制作に続いて、今回はヴォールト屋根としたわけです。
ただ、ヴォールト屋根をどこに設置するか、そして設置されたヴォールト屋根と既存の造形物をどうつなぐかは、慎重に考えなくてはなりません。ここでまずい配置をしてしまうと、全体空間が一気に壊れてしまいますので。今回は土嚢ドームの入り口から90度回転した位置にヴォールト屋根を配置し、ここを土嚢ゾーンのエントランスにすえながら、ドームまわりの円弧空間をドームへの導入空間としました。
今回の制作期間では導入空間を演出する側壁が完成しなかったのが残念ですが、これができるとドームへのアプローチがぐっと魅力を増します。またヴォールト屋根造形と高嶺さん制作の廃材切り妻造形が45度の角度を振って並列することで鋼管部分と土嚢部分のキレのいいコンビネーションが生まれています。
D研究所では土嚢建築の工法だけではなく、個々の要素の配置術をずっと追求してきました。複数の土嚢建築の配置は、そのほとんどの場合が設計当初から綿密に計画しているのですが、今回の場合はすでにあるカタチを前提条件として、ここに新たな要素を付加しながら全体を再構成することになります。
既存のカタチから誘導されつつも、新たな全体として再統合される構成。これは連歌的構成です。D研究所の作品でいうと、広島で建設した「ハッピーハウス」と、インドの「土嚢の読書室」でこの手法を用いました。
上の写真が「ハッピーハウス」です。この「ハッピーハウス」、ひとつのドームができたあとに、製作者のみなさんの夢がどんどん膨らんで、新たな増殖に至ったものです。この完成形は設計当初には頭になかったものです。現在はこの側壁の上を子供たちが走り回っているとのこと。とてもうれしく思ってます。
「いい家」は今回が第二期制作でしたが、11月にはタイからアーティストのOngさんがやってきて、この第二基のものを前提条件に新たな「何か」が増殖する予定です。この時には高嶺さんも戻ってくるので鋼管部分にも変化がおとずれるはずです。
この連歌的制作、今年末には一応の結末をみることになります。制作や設計の主体でありながら、それでも予想できない「何か」を孕みながら変化していく場所。ひとごとみたいですが、今後もとても楽しみです。
11月に入る前、つまり10月にもここは変化します。また、その模様はそのときに報告いたします。
というわけで第二期の報告でした。
追伸、
前回、こんな写真を紹介しました。
実はこれ、こんなことになります。子供、大人問わず、大人気スポットであります。
ではでは。
砂袋によるヴォールトの項を拝見しました。
ゴシック時代のヴォールトの作り方は「カテドラル デビッド・マコーレイ 岩波書店」で納得できるのですが、フィレンツェのダンタマリアデルフィーレの仮枠なしに作られていると記載されています。「ヨーロッパ建築史 西田雅嗣編
昭和堂 P144」 なにか漫画ぽい絵でよいのですが
どのように作っているか本があったらお教えください。
当方は建築関係とは全く関係ありません。
よろしくお願い致します。