2007年01月02日

かたちのしくみ考-「建築の構成」と「建築の空間」-前編

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 今回から、しばらくはD研究所の研究フレームを具体例をとりあげながら紹介していきたいと思います。別にフレーム自体は謎じゃないです(フレームが謎なら単なる怪しい集団ですから)。

 さて、今回は当研究所の直接的研究目的である「かたちのしくみ」についてです。「かたちのしくみ」といってもいろんな位相があるのですが、まずは作るべき内容を明確に空間へと変換するための「空間構成」と、作られた空間が経験される際に要求される「経験を誘導するかたち」に関してのお話です。

 具体例として「高野N診療所」をとりあげながら、説明していきます。ちなみに、この診療所は、1998年に開催された「渡辺菊眞建築展」に出展した5建築のうちのひとつです。展覧会自体は「風景批評としての建築」というコンセプトのもとに展開されたので、直接的に今回のテーマが主眼であったものではないですが、主コンセプトを実現させるために導入した、建築空間形成の根幹となる「かたちのしくみ」がありますので、これを題材にさせていただきます。なお「風景批評」に関してはまた改めて報告いたします。

 まずは「高野N診療所」の概要などから。

1、建築の機能
 医者家族の住宅付き診療所。1階が診療所、2階が住居部分。鉄筋コンクリート造2階。

2、建築の物語
物語1=「高野N診療所」のある風景
 京都市左京区にある診療所。京都市中心街とは違い、なんでもない、けれどゴミゴミした住宅地風景が広がる場所。鉄筋コンクリートの診療所というのもよく見る感じ。ただ、当診療所の外観はやたらに無愛想で、しかもとてつもなく背が高い(最高高さ23.5m)。そしてなんといっても壁面からニュッと付きでる物見台が無気味。

物語2=「高野N診療所」に通う患者が見る内部風景
 診療所としてはいたって普通。あるべきところに、「待合い」があり、「受付」があり、当然「診療室」も。でも、待会い上部の吹き抜けからチラチラ見える情景や診療室の異様に尖った天井など、何か気になる要素が、、。

物語3=「高野N診療所」の医者の生活風景
2階の住居部分。居間と、3つの和室、そして風呂などの水回り。いたって平凡な間取り。でも、和室の脇には針のように尖った診療所の屋根が突き刺さり、居間の床に空いた穴からは1階の「待合い」が覗く。また居間の天井はめちゃくちゃ高く(17.5m)、そこにむかってひたすら上っていく階段がひとつ。果たして、、。

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4、設計意図
 医者は、常に診療することを忘れてはいけない。たとえば、こんな医者は許さない。
こんな医者→「診療4割くらいのやる気で、お金をためて、毎年家を増築して、ゴルフ三昧。診療は優雅な暮らしのための手段です」
 そこで、こんな医者は生きていけない、素敵な住宅付き診療所を提案。
・居間からは常に吹き抜けを介して診療所の「待合い」が見える。不安げな患者の姿が常に想起されてしまう。のんびりワイドテレビなんか見てくつろげない。
・どの和室からも針のように尖った診療室屋根が見え、ノンビリ寝たくとも落ち着かない。
・とういわけで、住居部分にいても、常に診療所のことが気にかかる。
・「こんな、しんどい空間での医者生活はもういや」といったお医者さんに朗報。居間からひたすらのびる階段をつたって、その最上部からまっすぐ突き出た物見台へと向かいましょう。高さ19mの物見台から見える町の景色を
堪能して。もし人生に疲れたら、、。いやいやそれは言うまい。

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 要するに設計意図としては、垂直にゾーニングされた住居部分にいても医者は常に診療を意識し、その結果常時、診療へ向かう意識を保つか、それが嫌なら、その人生を放棄して死んでしまいなさい、という厳しいものです。人の命を預かるわけですからお医者さんは(もちろん建築家もそれぐらいの意識をもつべきです)。

 さて、ここまでが「高野N診療所」の建築概要(なんだか嫌な概要だなぁ)です。これを見てもわかるように、ひとつの建築を巡って、さまざまな立場からの風景が展開されるわけです。その人たちの意識によって、映じる風景は全然違ってきます。これらを全て意識しながら、彼等の風景がより鮮烈かつ深いものになるには、どんな「かたちのしくみ」を考える必要があるのでしょうか?

 ここからが本番なのですが、それこそ導入で長くなってしまいましたので、核心部分は次回の後編で、御説明いたします。

 御期待ください。
posted by 渡辺菊眞 at 07:52| Comment(0) | TrackBack(0) | Expeliments of Design System | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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