早いもので12月も末に近づいてきました。もう今年も暮れです。師匠も走るという師走。師匠なんかでない当方の今月はというと、より激しくバタバタ走り続けて今にいたっています。
さて、本日、タイへと渡航いたします。ミャンマーとの国境の町、サンクラブリ近くで「虹の学校」の建設が始まるからです。この建設に先立ち、渡辺研究室のメンバーに模型作製してもらいました。その写真とともに中身を少しご紹介。
下部は土嚢造、上部は単管で組み、木材(といってもコンパネ)で床をはります。屋根は草葺きとなります。
下部の土嚢建築は大地が隆起し、そこに空いた洞窟のような空間。胎内回帰の安らぐ空間です。
上部の軸組建築は宙に浮かぶ床。タイの伝統的居住形式である高床の空間です。
小ドームの上からは幅広の大きな滑り台が設置されます。浮かぶ床から大地に滑り降りる場所。
背面は巨大な屋根面。
この下部、土嚢建築、上部、単管による軸組の建築のコンビネーションは新潟、水と土の芸術祭の「産泥神社」ではじめて試みたものです。
産泥神社の遺伝子がタイに運ばれて、別のカタチとなってつながっていきます。
奇しくも、本日は水と土の芸術祭のクロージング。産泥神社がその役目を終える日にタイの建設が始まります。何か不思議な因縁のようなものを感じざるを得ません。
さて、「虹の学校」で使用する単管ですが、この採用理由はタイでは木材が使用不可(自分の土地にあるものは除く)なためです。外国に輸出するため過剰な伐採をしたためだと考えられます。その狂ったシステムは間違いなく私たち先進国(この言葉はいまや恥ずかしい)が導いたものです。
その意味で、こういった施設の建設を我々が無防備で行うと、自作自演のとんだ茶番になりかねません。そうならぬよう、これをきっかけに、彼の地の未来が別の道へと歩を進めるよう、その道筋を建築を通して必死に考えたいと思います。
竣工は3月過ぎを予定しています(たぶん、いろんな困難が待ち構えているのでしょうが)。
「虹の学校」の建設後は、金沢21世紀美術館にて開催される「内蔵感覚展」に作品を出展いたします。
人間の思考というものは通常、すべて脳によってなされると思われがちですが、より原初的な思考以前の思考として[内蔵感覚」というものがあります。この普段、忘れられがちな、しかし根本的な感覚を再度見直そうという展示会です。当方は「内蔵感覚」的な絵本を読む「内蔵感覚」的な読書スペースを設計、提示いたします(展示会はこのテーマに「ピンとはまる」ことで選定された作家、10数名がそれぞれの「内蔵感覚」な作品を出展するようです)。
これについてはまた追って、報告いたします。
何はともあれ、今年はもうすぐ暮れを迎え、今年は新年をタイで迎えます。昨年、彼の地で見た力強い太陽の姿を拝んで、新しい年のはじまりとしたいと願っております。
年が暮れ行く中ですが、あと少しある今年、そして来るべき新しい年、ふたつあわせて、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。少し早いご挨拶、でした。
D環境造形システム研究所 渡辺菊眞