2007年03月16日

ヨルダン視察報告005(0219最終日)

視察5日目。早いものでもう最終日である。

 今日は午後2時半にはアンマン空港に向かわねばならない。最終日は、アンマン市内の女性によるクラフトセンターの視察。そして、今回の視察で大活躍したヨルダン農村建築をまとめた書籍の著者でもある建築家:アンマール氏と会談することである。

 この日まで、日々その日その日にすべきことで頭がいっぱいであり、ホテル近辺をブラブラ出歩くこともなかった。せめて最終日はと思い、いつもより早めに起床。街を歩く。

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 ヨルダンのマクド(関西的ものいい)である。こちらではマクドに入ってダベるのは、若者のある種のステータスらしい。要はお金持ちの若者しか入れない値段ということである。おなじみの「I'm loving it」の文字。当たり前だけどどこでも一緒だ。僕は愛したことないけどね、マクド。

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 こちらはスターバックス。こちらもオシャレでリッチな若者の溜まり場だそうである。

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 僕が滞在したホテルあたりはまだ開発中のゾーンであり、建設中の建物が目につく。アジアではお馴染みのフニフニとなまめかしくまがった木のサポートによってコンクリート片枠が支えられている。

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 建設前の空地は、駐車場として使用されている。日本の都市部では建築更新の過程で見られる風景である。何十年かのサイクルを経て同じ風景があることに、少し不思議な気分に襲われる。

 ヨルダンが現在向いている方向をこの目で確かめつつ、朝の散歩を終えた。

 ここからが本番、まずはクラフトセンターに向かう。

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 ここは、相当大規模組織のクラフトセンターであるため、作品の販売と、製作風景の展示が行われている。なので女性が集団でものつくりに励む姿を見ることはできず、少し残念であった。今回計画する研修施設は10人ほどの女性団体のものであるので、見たい風景とはややずれていたからだ。ちなみに上の写真はモザイク画を製作している様子である。いろんな色の石材をハサミでチョキチョキ切って丁寧に配置しながら画面を形成していく。とっても根気のいる作業だ。

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 クラフトセンターから望むアンマン市街風景。急斜面にボックス型コンクリート住宅がひしめく。

 さて、時間があまりないため、そそくさとクラフトセンターをあとにし、アンマール氏の事務所へと向かう。

 アンマール氏は、とてもこころよく僕達を迎え入れてくれた。NICCOスタッフの大塚さんが、今回、計画を考えている研修施設の概要と、今回の施設で農村建築を探訪したこと、そしてその建設技術を使用した建築を計画したい旨を彼に伝える。

 研修施設の計画については、賛同してもらいつつ、以下の点に留意するようアドバイスを受けた。

 1、伝統技術を使用することの意味を考えること。たとえばクロスヴォールトの建築は柱に過大な過重がかかるため柱も基礎も巨大なサイズとなる。本当にそれがベストな選択かを判断せねばならないだろう。

 2、伝統様式の建築を、単なるノスタルジーのみで賛美して採用するのは避けること。未来へ向けた計画でなければならない。

 3、石造や、日干し煉瓦のみに固執するのではなく、現在入手できるさまざまな材料を工夫してミックスさせながら使用して合理的な建造法を考案すること。

 おおまかには以上であった。アドバイスというふうに記したが20世紀を経て、21世紀を迎えた建築家にとっては共通に持つべき認識であったため、新たな知見を得たわけではないが、共通の土俵の上で考えられることをなんだか嬉しく感じた。

 その後、壷やコンクリートブロックなどを活用した工法のアイデアをスケッチを交えて丁寧に説明していただいた。そこで常に重視されていたのが、断熱をしかっりとることであった。現在ちまたに溢れ出しているペラペラのコンクリート住宅は夏期に40度を超える室温になってしまうらしい。当然予想されることではある。ともあれ短い時間ながらとても充実した時間を送ることができた。アンマール氏に感謝の意を示し、彼の事務所をあとにした。

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 ふたたび、ホテル近郊の風景。ここに現在ヨルダンが向いている方向が如実に示されている。この方向を向いた状態で、現在、みんなが廃棄しようとしている石造伝統様式の住居をそのまま建造しても、何の希望もいだけないのかもしれない。それどころか薄暗い憂鬱を背負ってしまう気分にすらなるかもしれない。

 なので、異国の人である僕が単なるノスタルジーや異国趣味をないまぜにした計画を提示するのは最悪である。だが、このままでは完全に姿を消してしまうであろう石造建築の環境的性能や空間性の高さは、この国で進化してきた遺産かつ資産であるのも確かである。

 ヨルダンの人たちが、見慣れて、見飽きてしまったはずのこの工法と造形が、いままでにない配列をともなって、ワクワクするような未来を描くことが可能な空間となること。そんな空間の作り方を考案、明示することが僕の役割なのではないかと強く思った。

 それはクロスヴォールトの壁面に大きなガラス開口をはめただけのような建築でないことだけは確かである。

 何にせよ。ここからようやくスタート地点に立つことができる。なすべきことは簡単ではないが、これからじっくり腰をすえて建築家として提示すべきことが可能なことをなしていこうと思う。

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 最後は、5日間滞在したホテルの窓から。この窓からの風景が、何十年後かには、これではない風景となることを願って。そうでない未来の一翼を担えたらと想って。

 本当に最後になりましたが、
NICCOヨルダンスタッフの大塚友子さん、
同じくNICCOローカルスタッフのマジダさん、
そして、お世話になったみなさん、強行軍にもかかわらず、当方の意図を十二分に汲んで、視察を臨機応変に組み替えながら、充実したものにしていただいて、本当にありがとうございました。

 ここから描く未来が、とても魅力的なものとなるよう、これから頑張りますので今後ともよろしくお願いいたします。

 渡辺菊眞
 
posted by 渡辺菊眞 at 19:47| Comment(0) | TrackBack(0) | International contribution by architecture | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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