2016年08月13日

Architecture Asia Awards 2016 とFloating School version02

こんにちは。渡辺菊眞です。大変ご無沙汰してしまっております。前回の記事は2月でした。。
半年も前です。その間はというと、何もしていなかったわけではなく、ただ記事をあげられないだけでした。
そこで、このお盆を活用(?)して、この半年にあった出来事をアップしていこうと思います。まずはその第一弾。

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去る7月23日に、Architecture Asia Awards 2016の結果発表と表彰式がマレーシアの首都、クアラルンプールでありました。これはアジアの建築家によるアジアに建つ建築を対象とした、建築新人賞です。25作品のFinalistがクアラルンプールに赴きプレゼンをして、その数日後に結果発表がある、といった流れです。この度「タイの孤児院兼学校:虹の学校学舎天翔る方舟弐号ーFloating School version02」が、同賞のWinners(計9名がWinnersとなりました)を勝ち取りました。

「天翔る方舟ーSchool Floating in the Sky」は幾つもの国際賞をいただいた作品ではありますが、今回はVersino02での受賞であったことに大きな意味があります。「方舟」は2013年に竣工しましたが、上部の竹床や草屋根は永続的なものでなく、2年〜3年に一度は改修が必要です。Version02は、2016年3月に行った大改修の結果、力強く蘇った「新生方舟」なのです。改修を含めた全取り組みが評価されてのWinners獲得です。

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改修では、劣化した屋根材や床材をただ取り替えるのではなく、3年の月日を経て、開発された(片岡鉄男氏とガリアン族の大工さんたちによります)竹の新しい工法や、よりよい屋根材、そしてより根源的な空間構成への遡行、それらすべてが統合された果てのVersion upされた姿が「Floating School version02」です。今回はその改修風景を紹介いたします。

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傷んだ屋根材をとりはずします。この手の仕事は学校の子供たちにとってもお手の物。身軽に単管をよじのぼってヒョイヒョイと屋根材をはずしてくれます。

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屋根材はがしと並行して、単管の錆び止めを再塗装します。これは高知工科大学環境建築デザイン研究室メンバー(渡辺菊眞研究室)のお仕事。

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屋根はすっかりはがされ、時間の逆戻しを感じます。

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「方舟初号」の床材は竹を6分割した板材を敷き詰めていましたが、今回は丸太のまま敷き詰めます。この方が強度や耐久性があがります。

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乾季の日射は殺人的なので可能な限り迅速に屋根材を敷き詰めます。前回敷き詰めた「ヤーフェ」よりも丈夫で補修のしやすい「バイトン」を採用しています。

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竹は近隣から切り出します。小生も竹の切り出し現場に赴き、運びだしをしましたが、肩に4、5本の竹(幹に水がたまっていて超重たい)をかかえて800mほど歩かねばならず、5往復目になると肩に激痛が走りました(大工さんはヘッチャラなようでした)。

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改修をはじめてほぼ一週間で屋根は葺き終わり、

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殺人的日射から逃れて床を敷き詰めるとともに、階段に小さな小口の竹を敷き詰めます。この「小さい竹丸太」も以前の竹板に比べて耐久性の高い材料です。

このように書くと耐久性の高い材に変更しただけのように見えますが、核心はそこではありません。

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この学舎のメインコンセプトは上図のようなものです。「母なる大地」の延長として土嚢ドームが下部にあり、強烈に過ぎる「父なる太陽」から身をまもってくる大きな天蓋が上部に、そして空と地の間に浮かぶ水平な場が「人」のためにあります。この構成の純度を極限まで高めることが今回の空間変革の目標でした。そのため、初号にあった細々した意匠ははぎとり、純度の高い人間のための水平面を大屋根の下に浮かべました。

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10日あまりで改修を終え、新しい姿で蘇った方舟。その後、ふたたび教室として、さらには近隣の村の子供の遊び場として、活用されているようです。

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今回は一度目の大改修でしたが、これで終わりではありません。子供たちの場でありつづけながら、幾度も改修を重ねて生き続けていく建築として方舟は続いていきます。方舟は単なる建物でなく、豊かな未来に向かう道筋ーArchitecture as the way to a bright future であらんことを、切に願っていますし、そうあるために更新を続けたいと思います。

方舟だけでなく、宿舎棟も現地の片岡鉄男氏の指揮のもと見事に建ち上がって来ています。その話も近いうちにご紹介できたらと思います。
posted by 渡辺菊眞 at 11:33| Comment(0) | TrackBack(0) | International contribution by architecture | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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