最後はクアラルンプールのランドマーク、ペトロナスタワーのお話。
東京新都庁と同じく、ツインタワーの超高層です。誰でも何らかのかたちで目にしたことがあるかと思います。
ステンレスとおぼしき金属質の外観は、熱帯の日中に見るにはギラギラしすぎて正直しんどいです。2年前に最初目にしたときは、そんなギラギラへのしんどさのせいであまり正視すべき建築ともおもっておりませんでした。
今回、都市をウロウロしていて、ふと見上げたり、遠望すると、とにかくヤツに出会います。
ある時は超高層ビルの隙間から。
ある時はビル群のはるか遠くに。
建て込んでいる大都市のなかの建物なので当然ながら足下は見えません。上層部のみを拝むことが圧倒的に多いわけです。それがどこか非現実な存在を思わせます。あんなギンギラにも関わらず。
圧巻なのは、足下のモールのアトリウムから見えるヤツの姿です。トップライトの桟とガラス越しなこともあいまって、もはやヴァーチャルな存在へと変容してしまっています。こんな経験を重ねているうちにヤツは亡霊なのではないか?とまで思うようになってしまいました。
このビルを、最も近くから、そして多くの人々が見ることのできる場所としてコンベンションセンターが面している広大な公園があります。公園に面して巨大なモールがありますが、このモール、実はツインタワーの足下を構成している建物です。にも関わらず、デザインとしては全く別種な商業建築の装いであるため、このモールごしからの風景ですら亡霊感があります。
ツインタワーを全貌できる場所は公園の反対側にあるのですが、そこにじっと集える場所もないため、公園側から見ることが圧倒的に多いわけです。その意味でも地に足のつかない亡霊的光景となります。
また、ニューヨークのようなグリッド都市に墓石のごとく整然とたつ超高層群ではなく、どこかバラバラとビルが立ち並んでいる混乱した都市風景も、この亡霊感を高めているように思います。
日中はギラギラ建築ながら、それなのに実体感のないこと、月夜に照らされたときだけ静な光につつまれるさま。それらにアジアの建築を、なんだか感じてしまうのでした(設計者はシーザーペリなんだけど。。)。