8月20日に山形県酒田市立「太陽の家」(井山武司設計)で「親子でつくる太陽の家」ワークショップが開催されました。
模型を作りながらPassive Solar House(機械を使わずに太陽の恵みを最大限受け入れることで、夏涼しく、冬温かい環境を実現する建築)の仕組みを学ぶことが、このワークショップの目的です。故:井山武司さんは、一生をかけてPassive Solar Houseに取り組んでこられました。私は2002年度の冬の厳寒時に、井山さん主宰の太陽建築研究所に住み込みで共同研究をさせていただきました。地吹雪が吹きすさぶなか、それでも温かい研究所のなかでPassive Solar Houseについて真摯に教えてくださったことが、いまでもイキイキとした情景として思い出されます。
今回は、そんなPassive Solar Houseの仕組みを簡易な模型を作りながら学びます。

写真がつくる模型キットの完成版です。左が自分たちがいる大地を基準に、そこを巡る太陽の軌跡が季節によって変わることがわかる模型(天球モデル)。その右は太陽を中心に地球が地軸を傾け自転しながらも公転しているという、天体視点から太陽の家の仕組みを知る模型(公転モデル)。その上にのっているのは太陽の家の完成模型、そして右下は真っ暗で入り口しかない家が太陽の家になっていく過程を知る模型です。
簡易とはいえ、日々、模型を造り倒している私たち建築の輩とは違い、模型造りに不慣れな小学生です。作る分量も多いので、不安がありました。

しかし、いざはじまると結構上手にカッターナイフを使いこなし、何より真剣なおももちで模型造にとりくんでいました。

時折、お母さんに手伝ってもらうこともありますが、どちらかというと自分でつくりあげたい、やりきりたい、とおもっている子供たちが多かったです。

太陽が高度を変えて天空を巡る「天球モデル」、地球が太陽のまわりを回る「公転モデル」を時間内(2時間)に作るまでには至らなかったですが、みんなが作業中に私が急いで作った両モデルを使って仕組みを解説。

実感のわきにくい「公転モデル」を理解するのは難しそうでしたが、「天球」モデルは普段太陽を見る感覚とも近かったので子供たちは納得できたようでした。太陽のかわりに懐中電灯を使いました。。
この企画、2年前に太陽建築研究会と井山武司さんが実現させたいと強くねがっていたものでした。しかし、高知に最後の「太陽の家(井上邸)」を実現させたのち、井山さんは遠い場所へと逝ってしまわれました。
今回は会場自体が井山さんによる「太陽の家」であり、そのなかで「太陽の家」の仕組みを伝えるという贅沢な状況でした。また、井山さんが逝かれる直前まで病院のベッドでつくっておられたという高知の井上邸の大きな模型が展示されていました。井上邸ができた直後、「渡辺さん、完全なゼロエネルギーハウスができましたよ!」と興奮気味にはなされたていたことを思い出しました。

井山さんは人間の存立は「「父なる太陽 母なる大地」の対句のもとにある。」と強く語り、その反映として「太陽の家」を構想実現し続けた方でした。天体視点を常に意識してPassve Solar Houseに取り組むその姿に私もとても強い感銘を受けるとともに、こういう視点で「太陽の家」の仕組みを伝えたいとも、強く感じておりました。
今回実現の運びになったのは、井山さんの思いを受け継がれた太陽建築研究会の方々のご尽力によります。まだ1回目で私自身の準備としても不充分な部分はありましたが、毎年どうにか続けていきたいと思います。また、自分自身、宇宙の中にあるPassive Houseの構築を進めていきたいと思っております。