今回から昨年末に見た佐賀の茅葺き民家について御報告したいと思います。
まずは漏斗造の民家。
漏斗造りとは寄せ棟屋根の中央に、逆ピラミッド型、すなわち漏斗がある屋根形式を持つ民家のことです。
写真は国指定重要文化財の山口家住宅です。
漏斗造である結果として、内部には漏斗が垂れ下がり、その最下部から内樋が外部に向けて貫通していきます。
なぜ、寄せ棟屋根にしきらないのか? ここには諸説があるようです。
使用できる梁の長さに制限があった。寄せ棟屋根を立ち上げきると冬期の強風に耐えることはできない(すっとんでいく)。などなど。
いずれにしてもかなり特殊な屋根形状であり、さらに、ロの字型という自己完結的な形状ゆえに、この形式を保持するか、破棄するか。
という2択を迫られるようです(これを保持して部分的に増築をするなどの展開はほぼ見られません)。
ある種、強固な覚悟の上になりたつ空間形式だと感じました。この地に50年ほどまえには数多くあった漏斗造民家も、その多くは消失、
あるいは屋根形式を全く変えてしまうなど。そのことにより、その姿を見るのが難しいというのが現状です。
外壁の最も低い箇所では1500mmしかなく、そこから大屋根が獣よろしく立ち上がっていきます。
内部を貫通した樋はその舌先を雨水受けの桶に伸ばします。
現在、山口家はご主人の山口さんが居住しながら家を守っておられます。穏やかな口調で家のことをお話してくださりましたが、その困難さや
家をまもっていくことの覚悟、そしてその迫力を感じました。
安直なことは言えないですが、例をみない珠玉の民家だと感じます。残っていって欲しいと切に願う住宅でした。