佐賀の茅葺き民家その2です。今回はコの字の茅葺き屋根を持つ、クド造の民家について御報告します。
写真は多久市にある、移築された2つのクド造民家です。移築されているとはいえ、この近隣にクド造の民家は多く、この地域周辺に
多くみられる民家の形式だといえます(漏斗造の民家よりは随分北方です)。
それにしても、コの字で生まれる空隙のこの狭さ。もっと離すか、寄せ棟ひとつでまとめたら、など思ってしまいますが、これができないのは
先にあげた諸説によります。おさらいすると、
巨大寄せ棟屋根(この勾配のまま寄棟でまとめると超巨大な屋根になってしまいます)は冬の強風に耐えられない。
同じく、距離のあいたコの字だと、耐風対策の屋根として機能しがたい(風に対して平べったくなるので)。
使用できる梁に制限がある。
などです。
コの字になることで、漏斗造とは違って内樋にすることから開放されます。
コの字にはさまれた空間には極小の片流れ屋根がかかります。これは雨落としのための屋根ですが、この下にできる独特な小空間は、
活用すべき空間として積極的に意識されていきます。
漏斗造の場合は漏斗下にできる空間と、下にあてがわれた室はほぼ連動なかったですが、クド造の場合はこの狭いながらも独特の空間形状
を意識した平面が組み込まれています。
コの字のクド造は、独特な屋根形式を持つとはいえ、何かここを起点に応用が効く形式であることが予感されます。
例えばコの字のウイングの一部を延長する(幾つもの延長パターンが予想されます)とか。。
この応用が効きそうな空間性ゆえか、漏斗造と比較すると、この形式の民家はまだ数多く見ることができます。
具体的にはどんな応用が可能なのか?そんな応用編については、次回に御報告します。
渡辺菊眞