もう随分前のことなので、忘れてしまったかと思いますが、その中で日本建築の空間構成についても、吉備津神社を対象にして触れました。
また、前回の記事で、日本建築の空間特質について考察を進めていきたい動機についても簡単に記しました。
というわけで、元来、僕自身の研究フレームの中心のひとつであり、かつ近頃、その考察を特に進めたいと考えている日本建築の空間構成について、ある程度連続して触れたいと思います。
まずは「正面性」の問題から。
いきなりですが、自分の好きな人の顔を思い浮かべてください。10秒くらい。さて、その人の正面にあなたは立っています。あなたの好きな人が目の前です。うん。ほんわか(あるいはドキドキか)といい気分になったことでしょう。次にその人の背後に回ってみましょう。あなたの好きな人の背中です(なんだかしつこいな)。視線を背中から上の方にじょじょに移します。そこには好きな人の頭はなく、あなたの全然しらない老婆(あるいは爺さん)の顔が、、。こちらにもいや〜な正面が!!どこかはるか彼方にほんわかいい気分(あるいはドキドキな気分)はすっとんでいったでしょう(別種のドキドキはあるかもしれんが)。
これは衝撃的な経験です。正面という言い方には、その裏返しとして背面ということが想定されてます。でもその背面にも正面がある場合はダブル正面となり、背面はなくなってしまうのです(あるとしても背面ではなく「明るい正面」と「暗い正面」などの対照的な2正面となります。「二重人格」「分裂症」などを想起されたい)。
正面の在り方によって、そのものの特質が変化するだけでなく、それが周辺にあたえる影響も大きく変容します。
それは建築空間にとっても、非常に大きな要素です。そして、日本建築においても、この在り方は極めて大きな意味を持ちます。
というわけで、しばらく、この正面性の問題を取り上げてみたいと思います。


これは、ある著名な神社の本殿を囲む回廊と中門です。上の写真の(メインアプローチに位置する)門をくぐると、その姿をあらわします。門からのアプローチの仕方からいっても、明らかに、ひとつの正面を形成してます。
しかしここを直角に折れると、、、

重層の楼門を中核に据えた、もうひとつの正面があらわれます。意匠(デザイン)的観点からいっても、こちらも明らかに強い正面性を有しています。
直角方向のダブル正面の例です。
では、何故、こんなことが生じるのか、そしてそれがどんな意味を有するのか、そしてそれが示す展開力を、次回からみていきたいと思います。前フリの長さの割りに本編がやたら短くて申し訳ないですが、今回はここまでです。想像している以上に重要なのですよ。正面性は。ではでは、今後の展開をお楽しみに。