2007年09月28日

日本建築-正面性の展開力-その2

 さて、少し間があいてしまいましたが、話しを先に進めていきたいと思います。
前回は、正面性のお話その1、ということで、具体例として、とある神社本殿を囲む回廊をとりあげ、その正面性についてお話しました。

 そこで、その神社の矩型の回廊は少なくとも(前回では4辺全てについて検証したわけではないので)、直交する2辺のそれぞれの方向に正面を持つ、つまり二つの正面性があるといったことを述べました。

 しかし、今回は、その回廊の残り2面を検証していくのではなく、そもそも、その回廊の中にはどんな本殿が入っているのかについてお話したいと思います。「とある神社」なんていって、もったいぶってましたが、別に隠すようなことでもないですし、何が入ってるのか公開します。

 usa-honden-photo.jpg

 あの回廊に囲まれてこやつが鎮座してます。そう、屋根の谷間がくっついて、とっても雨仕舞いがたいへんそうな、このかたち。宇佐八幡神宮の本殿です。切り妻平入の社殿がふたつ合体したような特異な形状をしています。こいつ、有名な建築ですので、知ってる人はよく知ってると思います。

 さて、ではこの建築の正面性を検証していきたいと思います。何たって、このシリーズは「正面性の展開力」なんですし。そこで以下のような図をみてみましょう。

 yane+.jpg

 この図、ずいぶん前の吉備津神社の空間構成解析の時に紹介したやつです。日本建築にはたいがい勾配屋根がついてますので、その立面は三角屋根の形が見える方向(妻側)と、屋根が吹き下ろしてくる方向、すなわち立面的には屋根が四角く見える方向(平側)が生じます(ただし、ピラミッド型の屋根=宝形、四注屋根は除きます)。そして、この図を見てもわかるように、単なる造形としては明らかに三角型=「妻側」の方が、その正面アピール力は強いです。

 しかし、だからといって、日本建築は全てが「妻側」を正面に持つわけではなく、むしろ造形的には弱い「平側」が正面なことも多々あります。そして、この「平側」が正面な時に面白いことが生じるのです。

 「平側」に正面を設定しても、「妻側」の造形的強度は保持されます。それゆえ、設定上は正面でない「妻側」にも、造形としての正面性を有することになります。この日本建築の屋根の造形特質には注意が必要です。この特質をフルに活用して全体空間配置が構成されていることが多々ありますので。

 さて、このようなことを前提に再度、宇佐八幡本殿をみていきましょう。

usa-honden-syomen+.jpg

 これが本殿正面です。この本殿も「平側」正面なわけです。いわゆる設定上の正面です。

usa-honden-sokumen+.jpg

 そしてこれが側面。要するに「妻側」です。八幡造りの場合は「妻側」がダブルであらわれるので、その正面表示力は単体の「妻側」のそれよりも強力です。

 そう、このように八幡本殿は、直交方向にふたつの正面を有する建築であるといえます。そして、このように見てくるとこれを囲む回廊が、直交するふたつの正面を有することにも合点がいくのではないでしょうか?

 つまり、西門から入って見える回廊の第一の正面性は、その中にある本殿「妻側」の正面を受け入れるものであり、

usa-ue-nishi.jpg

そこから折れ曲がって南の楼門を中核にすえるもうひとつの回廊正面は、同じくのその中に位置する本殿の設定上の正面(=「平側」)を受け入れるものなわけです。

usa-ue-minami.jpg

 ただ、勝手に4面あるうちの2面の検証で止めてしまって、話しを進めていますが、回廊の残り2面、そして本殿の残り2面の話しはいったいどうなってるのでしょうか?そのあたりで、何か発見性のあることが言えないと、「正面性の展開力」なんて論はそれこそ展開できないでしょう。

 しかし、それを一気にやってしまうと長くなるし、ややこしいので、とりあえず、今回はここまでにしたいと思います。また次回をお楽しみにしてください。
posted by 渡辺菊眞 at 13:15| Comment(0) | TrackBack(0) | Spatial composition of Japanese Architecture | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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