この写真は大阪府太子町にある叡福寺の山門から、真っ正面を撮ったものです。えらくガランとしてて、中心が空虚な感じです。
奥にこんもりとした森が見えますが、これは聖徳太子の墓とされている古墳です。この古墳を原点とし、これを守護するために寺が造営されたので、中心線を「お墓軸」として明け渡して、本堂や多宝塔などの寺院建築要素は境内隅っこに位置しています。というわけで中心は空っぽな感じなのです。
さて、この中心線の奥に古墳があるわけですが、これは円墳で、その石室へ至る入り口に上のような覆屋がかかってます。
円墳回りには石畳の巡礼路のようなものがあり、さらにその外側は山の斜面となります。
この山の斜面には円墳を中心に、同心円状にお墓が設置されています。
それはどんどん山の奥、そして周辺まで広がっていき、
最終的には巨大な現代的墓地へと拡散していきます。
古墳を原点に、それを死者の場所の中心として、渦巻くように外へ外へと墓が無限増殖していきます。
寺院のゾーンはその中心を墓にゆずって空洞を保持しつつ、空洞を中心にその周辺に建築が散在します。中心空洞からの斥力により押し出されたかのように。
現在、日本建築空間構成の研究は大詰めです。これはもうすぐひととおりの完成を見ます。その後、葬送地の空間研究とクロスさせながら、再度、日本空間研究を深化させたいと思ってます。これはそのための備忘録です。
D研究所は聖域研究と葬送地研究を今後も進めていきます。極めて建築的で、しかもココロの問題が大きな比重をしめる空間だと思うからです。環境を問うことは、それを感受する人のココロの在り方を問うことでもあると思っています。
渡辺菊眞