2016年12月31日

2016年を振り返りつつ2017年へ。

こんにちは。渡辺菊眞です。
本日は2016年12月31日。2016年の最終日です。そこで、本年を振り返りつつ、来る2017年へ向かって、思うことを記してみたいと思います。

まずは高知高法寺の浮遊茶室:地空庵。

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建設は15年の夏から開始したのですが、なかなかに手強い建築で、今年も渡辺研究室のメンバーとコツコツと進めてきました。

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浮遊茶室と土嚢の円庭は完成。現在は土嚢外壁の左官工事をやっていますが、これまた手強い。来春にどうにかやりきりたいと思っています。完成まで、しばし、お待ちください。

次は、タイ国境の孤児院兼学校:虹の学校学舎「天翔る方舟」の改修工事です。

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今年3月にタイの現地常駐の片岡鉄男氏、ガリアン族の大工さん、引き連れて来た渡辺研究室メンバーとの合同チームで改修を行いました。「方舟」は2013年の夏に竣工しましたが、それから早くも2年半が過ぎ、草屋根と竹床などの仮設造作部分が傷んできたので、第一回目の大規模改修となりました。この定期的な改修は竹建築や草屋根の建設技術の継承、そして材料生産体勢の維持にとっても重要な活動です。メンテフリーでないことに意味があるのです。

しかも、ただ改修するだけだと、維持のみで発展がありません。今回は竣工時には気付かなかった、冗長な意匠を削ぎ落として、より根源的な構成を持つ建築を目指しました。

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「母なる大地としての土嚢洞窟」と「強靭な父なる太陽から保護する大屋根」。その間に「人が居る場所」があるという構成です。

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力強く「方舟」は蘇りました。

そして、今年の下半期に、全身全霊を捧げて取り組んだのが金峯神社救出プロジェクトです。

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ひょんなことから金峯神社に遭遇したのが2016年の冬。2014年の大雨で柱が礎石からズレ落ちて、大きく傾いた状態でした。前面の大梁が柱から落ちてしまい、建具をおさえつけていて、開かずの社殿となっていました。社殿の傾きは日々大きくなり、このままではいつ崩壊するかわからない様態でした。社殿の中には春日造りの本殿と、さらにその中には御霊が宿る御神体が閉じ込められていて、社殿の崩壊とともにこれらも押しつぶされる危険がありました。そこで、狭い社地ではなく、その麓にある平地に仮の社殿を設置し、そこに本殿を移そうというプロジェクトが発足しました。「金峯神社遥拝殿プロジェクト」です。

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建設は梅雨時で、いつ崩壊するかわからない社殿を思うと、迅速な建設が必要とされ、また電気の通らない建設地であることから部材のカットを極力しないことが必要となり、さらには台風や地震に耐えうる強度も要求されました。しかも、現地には車で入れないため建築材料を徒歩1kmの道のりを何往復もして運びこまねばなりません(あまりに重たい素材はNGとなります)。

その結果、鋼管足場で架構し、重心の低い直角二等辺三角形の断面形状とし、ほぼ部材カットなしでつくれるよう設計しました。建設は5日で完遂。渡辺研究室メンバー総動員の現場でした。

本来はここに春日造りの本殿が山腹から降りてきて安置される予定でしたが、その大きさと重さ故に断念。御霊が宿るお神体のみを安置することになりました。

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秋には実に10年ぶりとなる祭礼が行われ、神社が息を吹き返しました。

しかし、課題が残りました。春日造りの本殿が壊れかけの社殿に閉じ込められたままです。秋も終わり、今年も終わろうとしている師走。社殿はより激しく崩壊に向かっていました。そこで意を決して、本殿を安置する社殿建設に踏み切りました。

大きな設計指針は要拝殿と同じ。

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鋼管足場による架構です。ただ、この社殿に本殿を移した後は、壊れかけの社殿を解体、社地を整備し、この社殿を本来の社地に移動する必要があります。移動することが義務づけられている社殿なのです。そこでキャスターを設置し移動可能な社殿として設計しました。通称「山車社殿 Movable Shrine」です。

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この社殿も渡辺研究室総出で6日間で建設を終えました。

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悲願であった、本殿移設も無事終えて、本年の「金峯神社プロジェクト」はひとまず完了しました。
新年からは山車社殿の残工事と、社地整備に入ります。

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時期を巻き戻してもう一度今年の夏。太陽建築の魅力を伝えるべく、山形県の庄内地方に赴きました。太陽建築の恩師、故:井山武司さんが命がけで取り組んだ太陽建築の魅力を、ワークショップを通じてこどもたちに伝えるというものです。教材は渡辺研究室手作りのものです。

このワークショップは井山さんの意志を伝えて少しでも広めていきたいという思いで活動されている太陽建築研究会の主宰です。

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こどもたちと、少しマニアックなおとなたちが混在して工作する、とても楽しい時間となりました。今後も毎年開催していきたいと研究会のみなさんと誓い合った次第です。

今年の主な活動は以上のようなものですが、最後に今年いただいた建築賞について。

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Architecture Asia Awards 2016にてWinnerとなりました。マレーシアのクアラルンプールでプレゼンをおこなったうえでの受賞です。「天翔る方舟」はこれまで数多くの国際賞をいただいてきましたが、今回は改修後の「方舟version02」の受賞であることに大きな意味があると思っています。発展的に継承していくこと。そこが評価されたのだと思うからです。

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金峯神社遥拝殿。World Architecture Community 23 CycleでWinnerとなりました。他の受賞者にはZAHA事務所なども居て、そこにこの小さく安価な仮設建築があるのは異色に見えますが、フラットな視点での評価があるのが、同賞の魅力だと感じています。今後の展開への励みになります。

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自宅兼D研究所である「宙地の間」。こちらはWorld Architecture Community 22 CycleでWinnerとなりました。

今年は一作品だけでなく、取り組んできた多種の作品に対して受賞することができ新しい展開を感じることができました。

来年は、金峯神社プロジェクトの最終章、地空庵の完成、大和の山中における新プロジェクトの始動、太陽建築の次なる展開が控えています。2007年に「すぐこことはるかかなたをつなぐ」を根本思想としてD研究所は活動してまいりましたが、それが発展深化具体化して「Universal Locality= Universal Sun × Local Earth」という概念に到達しました。来年はそのさらなる深化を実践を通して示したいと考えています。

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来年もD研究所をどうぞよろしくお願いいたします。

2016年12月31日朝。奈良平群町の「宙地の間」にて。 渡辺菊眞

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2016年01月01日

2016年のD研究所。

あけましておめでとうございます。渡辺菊眞です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年は奈良に日時計の家「宙地の間」が完成し、それにともないD研究所も大和西大寺から、信貴山山麓の平群町へ移転しました。日時計ウラの空間を研究所に定め、薄暗がりのなかで時が動くのを眺めつつ設計構想する環境となりました。

さて、2016年のD研究所ですが、昨年から引き継いだことを含めいろいろな展開がありそうです。

1、「地空庵」建設(@高知の高法寺)
みなさまのご支援のおかげでクラウドファンディングもどうにか成功し、建設を進めていくことができます。
土嚢の丸壁の庭に浮かぶ、茶室的空間を年度末までにつくりあげる予定です。ここにしかない素敵な空間になるはずです。完成した暁には是非、体感していただけたらと思っています。

2、「天翔る方舟」の改修(@タイ国境の虹の学校)
完成から3年が経ち、土嚢の上に浮かぶ竹床、草屋根の大改修の時期となります。もちろん、骨組みはキープされますが、竹や草屋根は定期的に取り替えなければなりません。そのことによって、当地の伝統的工法の継承も意図しています。この建物、赤道直下の猛烈な炎天下でも土嚢ドームからの冷気を楽しめる、Passive coolingの優れた性能をもっています。今回の改修では、その更なる補強も考えています。時を重ねるごとによい場所になっていけるよう願っています。

3、宇宙的Passive Architectureの発展
日時計のある家「宙地の間」は宇宙を感じることのできるPassive ArchitectureのPrototypeでした。今年はそれをさらに発展させていきたいと思います。一つは地区型の住居の展開と重ね合わせること、もう一つは人々の心のよりどころとなる施設での展開を視野にいれています。

D研究所は2007年1月1日に「すぐこことはるかかなたをつなぐ」場所の構築を目指して結成されました。
9年の時を経て、その目標がくっきり見えてきました。「すぐここ」はかけがえのない、固有な質をもった場所「Local Place」であり、「はるかかなた」は場所をつつむ大きな存在たる「Cosmic Space」そして、その二つがかさなってできる建築は森羅万象がイキイキと輝く「Universal Architecture」だと規定しています。

D-Architecture=Universal Architecture=Local Place × Cosmic Space

この意識のもと、建築を進化深化できるよう邁進したいと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

D環境造形システム研究所代表 渡辺菊眞

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2014年01月01日

新年ご挨拶。2014年のD研究所。

新年あけましておめでとうございます。渡辺菊眞です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

D研究所は2007年1月1日に開設しました。早くも、ちょど7年が経ちました。
開設時に取り組んでいた仕事はヨルダンのコミュニティーセンターウガンダのエコビレッジプロジェクトです。

前者は当地伝統の石造建築(絶滅危惧的な工法)とRC造、そして土嚢建築の3種の工法を織り交ぜた建築。
後者は建築素人(高校生孤児)によって建設された土嚢の大建築でした。

この2つのプロジェクトはのちのD研究所の建築構想にとって、大きな骨格となるものとなりました。
何よりも昨年、建設したタイ国境の孤児院兼学校「虹の学校」学舎、天翔る方舟はその両者のあり方が統合されたものです。

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現地伝統の高床建築を参照しつつ、土嚢の高基礎空間を下部に設けた、上下で対照的な空間が統合された場所です。当地の技術と、その他の代替工法の組み合わせによる建築はヨルダンの系譜であり、子供の夢を容れる器のあり方を考え、みんなで実現させていくやり方、そしてそれがシンボルとなり、心のよりどころとなるのは、アフリカから徹底して考えてきたことでした。

昨年は、その時間の大半を、この建設に注力しました。ずっと取り組んできたことが統合、昇華されて、形となったことは素直に感慨深いものでした。今期は雨季の雨を貯める貯水池を建設し、校舎とあわせてひとつの「庭」のような場所になればと考えています。

この建築は今後より広く、大きく展開していきそうです。隣国の洪水に悩む地域の住居形式として、はたまた田舎で自立的にくらせるエコビレッジの建築として。これらはまた進捗あり次第報告いたします。

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次に今期、注力したいのは「太陽の家」プロジェクトです。太陽は、わたしたちの暮らしに大きな恵みをもたらしてくれ、それをうまく活用すれば、夏涼しく、冬暖かい、とても快適な住空間ができることはいまとなっては広く知られるところです。D研究所ではそれに加えて、太陽が体のいい「冷暖房装置」にとどまることなく、畏怖敬愛すべき大きな存在であることを体感できる空間性を生み出したいと思っています。我々をつつむ大きな宇宙。それを日々巡り、我々に光と闇をさずける太陽、そんな存在として太陽を感じる場所です。具体的には大きな日時計が内蔵された家です。

この構想は2008年からありましたが、諸処の事情や時機にめぐまれないこともあり、なかなか具体化へと移行できませんでした。しかし、今期、ようやく実体化できそうです。

当初はRC造にての建設を考えていましたが、木造建築へと変換しました。設計だけするとあとは施工者にまかせざるを得ない複雑で高額となるRC造による実現は、これまで途上国で創意工夫を交えて成し遂げてきた建築のあり方との乖離が激しすぎると感じ、昨年に思い切って木造へ変更しました。ローコストでありながら、その思想が確実に空間化される道筋ができつつあります。

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上記のスケッチコンセプトを、木造建築にて実現させる予定です。

Dとは、「つきつめても、つきつめても、なおその先にある何か」をさします。いってみれば「究極の真理」のようなものです。そんなことばにできない「何か」がある場所を構築したいと思い、D研究所を立ち上げました。その場所の構築のアプローチとして、大地に根をはる建築としての「大地の家」、そして太陽の恵みと偉大さを体感する建築としての「太陽の家」の二方向を考えていました。「大地の家」は主に土嚢建築プロジェクトとして、「太陽の家」は日時計のあるパッシブソーラーハウスとしてです。これらのことが、二方向ではなく、統合される道筋が、見えつつあります。おそらく今年は、そんな統合の方法を確立させていく一年となるのではないかと思います。

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いずれにせよ、その統合ですらゴールではありません。統合したとおもった、その先にやはり、名状しがたい、ワクワクするような場所、「Dなる場所」があるでしょうから。その構築にむけて、これからもより精進していきたいと思います。

D環境造形システム研究所所長 渡辺菊眞

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2013年07月17日

Dなる風景、ふたたび。

こんにちは。渡辺菊眞です。

毎年、この季節(梅雨が終わって本格的な夏に突入時)に体調を崩します。次はそんなことなきよう、その時は誓うのですが、今年もまた、崩してしまいました。よくない循環をたちきるというのもなかなかにたいへんなものです。

さて、前回の記事で、大和の地でプロジェクトが動きつつあることを報告しました。どんな空間を創造するかということでいろいろ想いを廻らせている今日このごろです。そんな時、随分以前の記事で「Dなる風景めざして」と題して、具体的なイメージを郷里の風景に重ねて記していることに改めて気づきました。以下、その引用です。

 奈良の山裾。段々畑にみかん。のどかな風景。でも奇妙な起伏。その裏側にまわるとまん丸な丘。丸い丘の片側には墓石が林立し、もう片側には神社が。その不思議な起伏は古代の墳墓。黄泉の国へと通じる漆黒の闇をたたえた石室が地中に。目を転じて山々。その上方、雲間から斜めに光のカーテンが降りそそぐ。すべてが黄金と化しほどなく陽が落ちる。例えばそんな風景。

 これは僕の郷里の「山の辺」の風景です。起伏に富んだ地形に、ホントのどかな田園風景。タマネギ畑にほっこりしてたら、実はその起伏、前方後方墳だったりするのです。そうかと思えば、そんな古墳を神様がいる山に見立てて傍らに神社を設けたり、古墳の上にさらに墓地を営んだり。日常と非日常の世界が何とも言えずに混在して、それがとてもとても不思議で魅力ある風景となっているのです。

 D研究所は、こんな風景をどうしたら創出可能か、真摯に考え、その方法を開発していきたいと思ってます。


今回のプロジェクトに限ることでなく、身近な日常(すぐここ)と非日常(はるかかなた)がつながる風景を創出するのがD研究所の目標です。研究所設立当初の具体性あるイメージを再度、確認し、そのイキイキとしたイメージを源泉にして、あらためてのぞもうと思います。

以上、備忘録として、でした。

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2012年12月24日

年末のご挨拶と来るべき年に向けて。

こんにちは。渡辺菊眞です。

早いもので12月も末に近づいてきました。もう今年も暮れです。師匠も走るという師走。師匠なんかでない当方の今月はというと、より激しくバタバタ走り続けて今にいたっています。

さて、本日、タイへと渡航いたします。ミャンマーとの国境の町、サンクラブリ近くで「虹の学校」の建設が始まるからです。この建設に先立ち、渡辺研究室のメンバーに模型作製してもらいました。その写真とともに中身を少しご紹介。

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下部は土嚢造、上部は単管で組み、木材(といってもコンパネ)で床をはります。屋根は草葺きとなります。

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下部の土嚢建築は大地が隆起し、そこに空いた洞窟のような空間。胎内回帰の安らぐ空間です。
上部の軸組建築は宙に浮かぶ床。タイの伝統的居住形式である高床の空間です。

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小ドームの上からは幅広の大きな滑り台が設置されます。浮かぶ床から大地に滑り降りる場所。

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背面は巨大な屋根面。

この下部、土嚢建築、上部、単管による軸組の建築のコンビネーションは新潟、水と土の芸術祭の「産泥神社」ではじめて試みたものです。

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産泥神社の遺伝子がタイに運ばれて、別のカタチとなってつながっていきます。
奇しくも、本日は水と土の芸術祭のクロージング。産泥神社がその役目を終える日にタイの建設が始まります。何か不思議な因縁のようなものを感じざるを得ません。

さて、「虹の学校」で使用する単管ですが、この採用理由はタイでは木材が使用不可(自分の土地にあるものは除く)なためです。外国に輸出するため過剰な伐採をしたためだと考えられます。その狂ったシステムは間違いなく私たち先進国(この言葉はいまや恥ずかしい)が導いたものです。

その意味で、こういった施設の建設を我々が無防備で行うと、自作自演のとんだ茶番になりかねません。そうならぬよう、これをきっかけに、彼の地の未来が別の道へと歩を進めるよう、その道筋を建築を通して必死に考えたいと思います。

竣工は3月過ぎを予定しています(たぶん、いろんな困難が待ち構えているのでしょうが)。

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「虹の学校」の建設後は、金沢21世紀美術館にて開催される「内蔵感覚展」に作品を出展いたします。

人間の思考というものは通常、すべて脳によってなされると思われがちですが、より原初的な思考以前の思考として[内蔵感覚」というものがあります。この普段、忘れられがちな、しかし根本的な感覚を再度見直そうという展示会です。当方は「内蔵感覚」的な絵本を読む「内蔵感覚」的な読書スペースを設計、提示いたします(展示会はこのテーマに「ピンとはまる」ことで選定された作家、10数名がそれぞれの「内蔵感覚」な作品を出展するようです)。

これについてはまた追って、報告いたします。

何はともあれ、今年はもうすぐ暮れを迎え、今年は新年をタイで迎えます。昨年、彼の地で見た力強い太陽の姿を拝んで、新しい年のはじまりとしたいと願っております。

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年が暮れ行く中ですが、あと少しある今年、そして来るべき新しい年、ふたつあわせて、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。少し早いご挨拶、でした。

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D環境造形システム研究所 渡辺菊眞







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2012年11月28日

かわらぬ大きな世界と、うつろいゆくこの世界

こんにちは。渡辺菊眞です。
また、ずいぶん間があいてしまいました。10月以降、一気にバタバタしはじめて正直忙殺されておりました。

その間に、あったのか、なかったのか、わからぬままに秋は過ぎ去ってしまい、もう冬に突入してしまいました。高知は日が照る昼間はポカポカしますが、朝夕はグッと冷え込みます。体調くずさぬよう注意したいところです。

さて、バタバタしながらも、以前に報告したプロジェクトはどんどん具体化しております。今回はその模様をご報告します。

まずは年末の建設が目前に迫ったタイ国境の「虹の学校」。

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3:4:5のピタゴラス三角形の頂点に配置された三つの土嚢の島と、その上に浮かぶ床。土嚢は大地が隆起してできた島に、穿たれた洞窟のような空間です。その上に単管で組まれた軸組の床が浮かびます。そこに大きな屋根が被さるという構成です。

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下部の土嚢の島は、浮かぶ床を支える不動の構造です。高床を支える基盤たる大地の象徴でもあります。それに対して上部の浮かぶ床は、状況に応じて、組変わったり、増築したりすることも許容する、生活に応じてうつかわりゆく空間として設定しています。動かぬ世界と、人の暮らしのなかでうつりかわっていく空間。それが対置され、結合された全体が「虹の学校」なのです。

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島の空隙を縫うように大地と床、床どうしをつなぐ階段や滑り台が交錯します。ここを昇って、下って、滑り降りながら躍動する子供たちの姿が、少しでも早く見られたらと願っています。

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次は「宙地の間」です。似た模型が二つならんでいますが、右側がRC部、左は木部含めた全体模型です。要するに木とコンクリートの混構造となっています。RC部は住宅に内蔵された日時計など、太陽や天体と呼応する空間です。大きな世界のなかにある建築です。一方木部は日を浴びて伸びていく森のイメージです。住空間として主たる空間をなす場所ですが、人とともにある、身近な世界のなかの建築です。時がたって、木部が朽ちてしまったとき、この建物は古代遺跡のように大きな世界の中のものとなり、その風景が日常世界の背後に隠れた広がりを感じさせることになります。

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最後に、新プロジェクトです。とある町の歴史庭園と、休憩施設です。まだ、構想をはじめたばかりですが、この施設では休憩施設がひとともにある、身近な世界のもの。庭園が大きな世界と呼応した変わらない場所として設定されています。

どのプロジェクトにも共通なのが、うつりゆく身近な世界と、変わらない大きな世界が対置され、結合されていることです。わたしたちは、身近なこの場所にいると同時に、その背後に隠れている大きな世界の中にも生きています。そんな二つの世界に在ることを常に感じられる場所。それは、特殊な事ではなく,建築にとってとても普遍的な在り方だと考えています。D研究所が「すぐこことはるかかなたをつなぐ」をテーマにしている所以はまさにそこにあります。

次のご報告では、より具体化した姿を、特に「虹の学校」では建設模様をおつたえできるのではと思っております。では、またその時まで。




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2012年09月01日

空隙から「余白」へ。

こんにちは。渡辺菊眞です。

早いものでもう9月。夏も明らかに終わりが近づき、秋の気配を感じます。季節の狭間にあるせいか、天気は毎日不安定。早く秋になりきって欲しいものです。

さて、先のブログで報告したように、現在、D研究所では幾つかのプロジェクトが同時進行しています。内容、場所ともまるで違うのですが、表現として共通のテーマを抱えています(というより、期せずしてそうなったというのが正確でしょうか)。結論から言うと「余白」をどうつくりあげるかということです。

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「余白」の前にまず空隙の話。4月から6月末まで、産泥神社の制作をおこなってきました。これは都市の空隙を舞台にしたものでした。身近な場所にあるにも関わらず、ほとんど誰も気にとめないような場所。ここでいきなり建設が進んでいく事で、意識が空隙へ向い、「なんでもない」と思っていた日常の風景がゆらいでいく、そんな意図でつくりあげたものです。

次に「余白」。これは文字通りで言うと「表現されたものの残余にある空間」に過ぎません。ただ、ご存知のように我が国の、特に伝統芸術の世界では極めて重要視されてきた概念です。前面にある表現物以上に「余白」が重要で、そこから別次元の世界がにじみ出る(「宇宙が開かれる」など言われます)、ほどなのです。

実は小生、大学院時代に京都を舞台に「都市の「余白」」研究をしていた経歴があり、その意味では随分前から強く意識してきた概念ではあります。しかし、実際の設計の時には、何故かこの概念を意識的か無意識的かはわからないですが、これまで遠ざけてきました。

そんな「余白」なのですが、産泥神社以降に進めることになったプロジェクトで不意に浮上してきました。まずは今年の冬から建設がはじまる「虹の学校」。タイとミャンマーとの国境にある孤児のための学校です。大地から立ち上げる下階が土嚢建築、その上部に高床の軸組がのるという変則的な建築を提案しています。

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このユニットが4棟集う時にマンダラをなします。D研究所が10年追求を続けてきた「泥曼荼羅」の手法ですが、それを今回も採用しています。ただ、今回に関してはマンダラが完成したときに、その中心に何もおきたくないと感じました。計画地がこれまでの地(インド、アフガニスタン、ヨルダン、ウガンダ)と比較して最も東アジアよりだったから、あるいはタイが熱心な仏教国だったからかもしれません。

2月に視察に行ったときから中心にモニュメンタルなものを据える気がしませんでした。なので4棟集う時には丸い空隙だけが建ちあらわれることを想い、その空隙で地と天がつながり、子供たちが想像力の羽根をはばたかせることを考えてきました。ちょうどそんなおりにD研究所メンバーの江崎貴洋氏によるロゴ案が全く同じ構想であったことに驚きました。彼とはともに視察にいきました。同じ何かをその時に感じたのかそれはわかりませんが、不思議な共時現象でした。

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現在構想がようやく固まりつつあり、今後はこれを基準によりいいものになるようつめていきます。

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最後に来年の春から始動するプロジェクト。これはまだ具体的なことは言えませんが、やはり「余白」が表現のテーマとなっています。

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木架構が連続するトンネル的な空間を提示していますが、主空間はこれではありません。この外側にある空間=「余白」が主となり、そこから別な世界がにじみ出て来ることを計画しています。

「余白」というとゲシュタルト心理学の「地と図」のようなことだけに帰着しがちです。意識をどちらかに向ければ、それが図となり、他方が地となって後退するという、あれです。ただ、地と図の振動だけでは「余白」はやはり残余のままでとどまります。そこから宇宙が開かれるようなそんな「余白」であることを真摯に目指していきたいと思います。

 プロジェクトは進行に応じてまた報告いたします。今回はこの辺りで。。






posted by 渡辺菊眞 at 16:07| Comment(0) | TrackBack(0) | D | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月31日

月評2010の11月号発信。

こんにちは。渡辺菊眞です。

ここ数日は所用で東京にいました。台風においかけられるようなかたちになってましたが、高知に戻ることで難を逃れました。

さて、本日は11月1日。というわけで、「月評」羽化の日です。
11月号ですが、本家月評と同じく、対象作品は新建築10月号のものです。

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前回は1000号記念ということで特集も作品も見応えあるものが多かったですが、今号は正直、扱いがたくなかなかに大変でした。
何はともあれ、ご覧戴けたら幸いです。

ではでは。
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2010年10月25日

羽化を待て。D会議と「月評」蛹化。

こんにちは。渡辺菊眞です。

昨日はD研究所定例会議と「月評」11月号の編集会議を行いました。

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撮影:片岡佑介(D地域空間計画工房


会議では、ハイチ帰りの江崎氏から当地での活動報告、とある木造実施プロジェクトの進捗状況やガーナプロジェクト、はたまた高知D工房でのEARTH GARDENプロジェクト等についての報告などなど、、さまざまな報告と今後進むプロジェクトに向けての議論などがなされました。

「月評」編集会議は、文字とおりですが、11月1日発信予定の「月評」に関する最終打ち合わせです。

さて、その「月評」ですが、本日は25日。というわけで規定ルールにもとづいて、一旦、1日まで蛹化します。この蛹は1日の羽化によって解除されます。

そんな羽化まではあと少し。しばし蛹の状態です。

では、 1日をお待ちください。
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2010年10月22日

完結!「建築にさかのぼって」

こんにちは。渡辺菊眞です。

本格的に秋の到来、なんてことを言ってましたが、日が落ちるのがとても早く、その後に気温がぐっと冷え込むのを感じるにつけ、少しずつですが冬が近づきつつあることも感じてしまう今日このごろです。

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さて、時間がかかりましたが、とうとう「建築にさかのぼって」のupを完結させることができました。今回upしたページは以下になります。

3、建築にさかのぼって
4、おわりにー始源に遡行し未来へ接続するー

タイトルからも分かるように、今回のup部分はこの小論の核心です。世界各地での建築実践を経て、どういう思考に至ったかを書き記しています。ここで今後の建築にとってさらに重要になるであろう4つのキーワードを抽出しています。一見どれもこれもとても古典的な概念が並べられているように感じられるかと思いますが、いわゆる「通例」の扱われ方とは異なっております。その根拠こそ、実践の風景の中にあるのです。実践と思考の往還から導かれた概念として再提示しています。

「建築にさかのぼって」はD研究所のマニフェストとともいえるものです。それなのに中途upみたいな状態が長く続いてしまい、なんとも気持ちの悪かったですが、ようやくすっきりしました。これを執筆したのはちょうど1年前であり、今回upしたものはそれを基本的に改訂せずそのままあげたものではありますが、この一年間でこれを土台にしながらも、すこしずつ思考を更新しています。またまとまったらお伝えできるかと思います。

まずは、ご覧いただけたら幸いです。

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2010年10月15日

「太陽の家」構想@「建築にさかのぼって」

こんにちは。渡辺菊眞です。

 高知はここ数日は秋晴れです。日中は暑い日などもありますが、午後5時を過ぎると日が陰り、6時には真っ暗です。たぶん、あっという間に冬もやってくるんだと思います。

 さて、前回、再開を報じた「建築にさかのぼって」の続きをUPいたしました。

 今回は土嚢のお話ではなく、太陽建築の取り組みについてです。そのメインとなるのは「太陽の家」構想です。

 D研究所では「父なる太陽、母なる大地」を地球生物の存在様態真理だと捉え、その在り方を具現するものとして「大地の家」「太陽の家」を追求しています。その追求の果てにこそ「Dの建築」が現れると信じています。

 何はともあれ、ご覧戴けたらと思います。

それでは。

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ちなみに上の写真は「太陽の家ーSundial Passive House 35、日本標準型の太陽の家」です。パッシブソーラーハウス×天体建築によって
太陽の恵みを享受しながら宇宙的存在たる太陽にも思いを馳せることができます。
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2010年10月11日

再開。「建築にさかのぼって」

こんにちは。渡辺菊眞です。

最近の高知はとんでもない大雨で道路が冠水したりもするのですが、今日はそんなことをまったく感じさせないきれいな秋晴れです。

さて、長らく休載(単純にupが滞っていた)していた「建築にさかのぼって Back to an Architecture」の連載を再開いたします。
これは、D研究所が追求している「大地のいえ」と「太陽のいえ」について、そして、その双方をこの時代に追求することの意味を書き記したもので、当研究所のマニフェストとともいえるものです。

今回はヨルダン南シューナ地区コミュニティセンターの記事をアップしておりますが、その後に続く「太陽の家」構想、そしてこの小著の核心ともいえる「建築に遡って」もできるだけ、間をあけずにupしたいと想います。

まずは「ヨルダン」の記事をご覧いただけたらと思います。ここにしか載せてない写真などもアップしております。

それではまた。

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2010年10月01日

公開!建築批評サイト。

こんにちは。渡辺菊眞です。

本日は10月1日です。以前、告知していた建築批評サイトの公開日です。というわけで、公開いたします!
月イチで、建築批評を行うということで、サイト名は「月評」です。アドレスは以下になります。

月評 http://gezzpyo.sakura.ne.jp/

毎月1日は「月評」アップの日。記憶の片隅にでもとどめておいてもらえたらと思います。まずはご覧いただけたら幸いです。

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↑画:高橋俊也

それではまた。


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2010年09月14日

D会議 建築批評サイト始動直前

こんにちは。渡辺菊眞です。

少し前に台風が来て、それが去ってから、夏も去ってしまったようでいきなり秋めいてきました。
もともと、春と夏が苦手な小生としてはホッとしています。また戻ってきたりしないでほしいです、夏。

さて、去る9月12日にD研究所で会議を行いました。
いつもの定例会議とは違い、水面下で準備を進めていた、建築批評サイトの立ち上げに向けた編集会議です。

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D研究所での建築設計活動は、土嚢建築や海外での被災地復興支援など、あまり一般的とはいえないものですが、同時代のさまざまな建築活動と決して無縁ではありません。無縁どころか同じ土俵上での活動の一様態だと考えています。

ただ、そうはいっても、海外のさまざまな風景や、建設現場、そして何気なく見ている日本の住宅風景と、日本の建築雑誌の誌面を彩っている数々の作品が、同じ地球上に同じ建築として存在していることに,何ともいえない強い違和感を感じることも事実です。

今日び、よく価値観の多様化といった言葉を聞きますが、上記の混在の風景は、そんな言葉であらわせるようなものとはまた違うのではないかと思っています。表層の多様な混在の中に何か大きな、しかも根本的な問題が潜んでいるような気がしてならないのです。ただ、傍目でそんなことをつぶやいても甚だ不毛です。

そこで同時代で展開されている建築活動の様態を、ひとまずは当方も含む建築家の作品に絞りながら、それを見つめ、そこに潜んでいる問題等をあぶり出してみたいと思いました。

ここしばらく、ずっと水面下で動いてましたが、もう水上に現れる直前です。始動は10月1日。ごちゃごちゃ書き連ねましたが、気がむいたらご笑覧いただけたらと思います。

いずれにしても10月1日に全てが明らかになります。乞うご期待です。
posted by 渡辺菊眞 at 22:15| Comment(0) | TrackBack(0) | D | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月21日

D工房の「ひだまり日記」。

こんにちはー。D研究所の電子助手:D.桜良です。
今日は高知県神母ノ木(いげのき)のD工房ブログ開設のお知らせです。

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D工房の公式blog、「Dのひだまり日記」のページが開きました。
D工房では、ワクワクする「Dなる風景」を生み出すために実践的な
(建築をあたかも工作のようにいろんな素材であれこれつくって模索開発する)
活動を展開していきます。

 また四万十などの魅力ある山村の調査模様などの報告もあるようです。

 そんな工房の日々の奮闘が、工房の人から送られてきます。
みなさん是非のぞいてみてくださいねー。

 それではお知らせでしたー。

D.桜良

追伸、上の写真がD工房です。南向きの平屋で敷地は120坪です。
いろんな工作を展開予定とのことです。
sakura-hidamari.jpg




posted by D.桜良 at 11:40| Comment(0) | TrackBack(0) | D | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月01日

Dから新年のご挨拶。

 あけましておめでとうございます。渡辺菊眞です。
本年もなにとぞよろしくお願いいたします。

 さて、新年ということでD研究所のweb表紙を更新いたしました。よければご覧ください。

 2009年には、ヨルダンの南シューナ地区コミュニティセンターが竣工し、東アフリカエコビレッジのモデルハウスも8割がた完成いたしました。また、このモデルハウスの建設を担った、キクング村の高校生リーダーが、今度は別の村に土嚢技術の移転のため出向いていきました。世界で撒いた種が少しずつですが芽生えつつあります。

 今年、2010年にも、またアフリカにおもむき、新たなモデルハウスを現地の人々と一緒につくりあげていきたいと思ってます。また、ヨルダンで、第一弾として実現した太陽エネルギーを有効に活用して快適な空間を生み出す「太陽の家」研究も本格的に進めていく予定です。

 さらに、高知ではD研究所の双子機関:D地域空間計画工房(通称;D工房)が4月に始動します。それに先立ち、3月には高知工科大学で学生とともに立ち上げたLINE PROJECTの展示会を開催します。これらについてはまた改めてお伝えしたいと思ってます。

 D環境造形システム研究所、そして4月に立ち上がるD地域空間計画工房も、その根幹にあるものはいっしょです。

 すぐこことはるかかなたをつなぐ

 世界中にある、かけがえのないこのちいさな場所は、いつでも宇宙へと通じています。
 とても大切な、この一瞬は、長大な時の流れとつながっていきます。そんな、「すぐここ」と「はるかかなた」をつないでいく、そんな場所を我々は創造していきたいと願っています。

D研究所、D工房ともども、今後ともよろしくお願いいたします。

Dの赤い所長 渡辺菊眞

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posted by 渡辺菊眞 at 00:26| Comment(0) | TrackBack(0) | D | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月02日

Dの建築と研究

こんにちは。渡辺菊眞です。

 研究所も移転し、活動を本格的に開始しています。ずっと継続的に続けていた土嚢の建築はもちろん、太陽光をふんだんに取り入れた快適な住宅、そして天体の運行を感じながら過ごせるような建築空間の設計など、いよいよ「Dな建築」実現に向けての取り組みを進めています。

 さて、それと平行して本腰を据えて取り組んでいる研究があります。一つは日本建築の空間の研究。これは本格的に進行中で書籍としてまとめはじめています。

 その一環として、日本社寺建築の補足調査も行っています。基本的に対象社寺の調査は完了しているのですが、足りない資料の収集や、空間の再確認などをおこなってます。

 この日本建築空間研究は、Dの赤い所長、要するに渡辺菊眞を主として取り組んでいる研究で、Dの緑の研究員:高橋俊也氏が、サポートしてくれてます。さて、その高橋氏は墓の研究に取り組んでいる「墓博士」です。

 ですので、社寺調査に加えて、社寺周辺の集落にある墓や、聖地内に位置する墓などの調査も行っています。これが二つ目の研究です。

 墓空間も、社寺空間におとらず、とてもおもしろいです。何がおもしろいかと言うと、そこに住む人々が、死後の世界をどのように想像したかを墓地を見ることで感じられること、そして、そんな死後の世界や死んでいった祖先へ寄せる思いが実にさまざまな風景となって現れていることです(たとえば奈良内だけでも実に多様な展開を見せます)。

 この二つめの研究も、緑の研究員から追って報告できたらと思います。

 社寺などの聖地、そして墓地、これらはともに、「自分たちが住んでいる世界」と、「それを超えたところにある世界」を、「つなぐ空間」です。そういう日常を超える世界への想いがあるからこそ、普段いる自分たちの日常がいきいきとした時空になるんだと感じています。

 D研究所がこれらの空間に強くこだわっているのも、そんな想いからです。研究の成果は、できるだけ早期にお伝えしたいと感じてます。

 お伝えした後も、また別な新たな発見があって、このふたつの研究はずっと続けていくことになるかとは思いますが、、。

 D研究所の赤い所長 渡辺菊眞

 
posted by 渡辺菊眞 at 19:40| Comment(0) | TrackBack(0) | D | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月10日

何ものが何をつくるのか。

 御無沙汰しております。渡辺菊眞です。

7月に凍結してから、8月が終わりもう9月。8月は解凍期間だった感じになってしまいました。

 解凍するってことはお肉を考えたらわかるように、いまからそれをつかって料理するってことで。そう。解凍してほっといたら単にお肉腐ってしまいますから。準備期間は終了で本格的活動に突入していきたいと考えています。今日はそんな本格的始動の方向性に関して少し。

 いま、僕を中心に、D研究所では、石造+土嚢建築の「ヨルダン計画」と、土嚢によるエコ集落モデルである「ウガンダ計画」(詳細はまだいえませんが)に取り組んでいます。

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 そう。ともに日本から遠く離れた海外での仕事です。当然、それぞれの国がおかれた状況や、抱えている問題、そしてその地域が育んで来た文化(造形的特質を含めて)等、すべて考慮しつつ、計画を進めていくわけです。とても遠い国からの使者が。

 それが問題であるとは思いませんが、そうなったときにやはり問われることがあると思います。というより、自分で問うてるのですが。
「お前は何ものなのか」と。

 こういった海外での仕事に取り組む前から僕自身は日本建築の空間特質の研究に取り組んで来ました。外部を知らないものが自国のことに言及するとトートロジー(あるいは自己撞着)に陥る危険があると
はよく言われますし、言われ続けてきました。

 それはそうなんだろうなと思いつつ、ただ、明治時代から西洋文明を受け入れて、100年過ぎ。現在の日本においては西洋に対して構える必要もなくなったし、またそのおかげで自国に対して盲目的になることもなくなったと僕は思ってます。無理に西洋的思考を「導入」せずともそういった思考法がもう、地の思考法と同様に「我がもの」となってしまってますから。

 なので自国の建築等に対して言及するのも、自己撞着することなく、かなり「ひいて」見ることが可能になってると思っています。

 ただ、実際に海外の仕事に取り組み、そして現地に赴く回数が増えるにつれて、やはり、自らが、自らの地域の建築をどのように捉えて、それゆえにどのようなスタンスや方法で「建築を考え、構築して」いるのかを明示する必要があると強く感じるようになりました。

 それは、他国でそれを実際に問われるからではありません。それどころかむしろ、そんなことは問われないことが多く、日本がもってる「テクノロジー」のみ(例えば耐震技術など)を要求されることの方が多いのです。逆にそれだからこそ、「自分の地域の建築とは何か(そんなのは結局ないという解答も含めて)」を明示したいと強く感じるのです。いわゆる「テクノロジー」のみで済んでしまう問題なら
早晩、不要な存在となりますから。

 なので少なくともD研究所は、そして僕は自国の「「かたち」を構成する「テクノロジー」」そして、そのようなテクノロジーを生み出しうる思想を自分なりに明らかにして、それを携えて海外へと出向きたいと思うとともに、彼の地の「「かたち」を構成する「テクノロジー」」も知りたいと思っています。それらが渦巻くことで、こそ新たな「テクノロジー」が生まれ、しかも、それをお互い共有できるでしょうから。

 さて、長くなりましたが、というわけで、今後は、この「Dの扉から」では、海外の2大計画の報告と、それと同時に大詰めを迎えている「日本建築の空間構成」に関する考察の、3つを骨にしつつ、御報告したいと考えています。

 そのなかで「かたち」をつくることの普遍性と、特殊性、そして、そこから何を生み出すことが可能かを提示できるのではないかと考えています。おそらく面白い報告ができます。御期待ください。

 Dの赤い所長 渡辺菊眞

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2007年01月28日

Dなる風景めざして-ホームページ開設-

 渡辺菊眞です。今日は報告です。D研究所のホームページを開設いたしました。実はこのブログプロフィールのURL欄にも地味にアドレスが記載されてます。

 D研究所ホームページアドレス→ http://www.d-ken.info/
です。是非一度のぞいてみてください。

 そのホームページの「D」というコーナーに、「Dなる風景」という文章を書き記しています。以下のようです。

 奈良の山裾。段々畑にみかん。のどかな風景。でも奇妙な起伏。その裏側にまわるとまん丸な丘。丸い丘の片側には墓石が林立し、もう片側には神社が。その不思議な起伏は古代の墳墓。黄泉の国へと通じる漆黒の闇をたたえた石室が地中に。目を転じて山々。その上方、雲間から斜めに光のカーテンが降りそそぐ。すべてが黄金と化しほどなく陽が落ちる。例えばそんな風景。

 これは僕の郷里の「山の辺」の風景です。起伏に富んだ地形に、ホントのどかな田園風景。タマネギ畑にほっこりしてたら、実はその起伏、前方後方墳だったりするのです。そうかと思えば、そんな古墳を神様がいる山に見立てて傍らに神社を設けたり、古墳の上にさらに墓地を営んだり。日常と非日常の世界が何とも言えずに混在して、それがとてもとても不思議で魅力ある風景となっているのです。

 D研究所は、こんな風景をどうしたら創出可能か、真摯に考え、その方法を開発していきたいと思ってます。

 開設したばかりのホームページ、実は工事中の箇所が多く、できたページでさえどんどん変容していく予定です。ずっと工事中みたいな、、。
何だか奇妙な生き物のような、そんなホームページにしたいと思ってます。

 それがDなる風景へと近付いていくことを願って。

 これからは、このブログにも、江崎研究員、高橋研究員からの研究活動報告が次々と届きはじめます。彼等もともにDなる風景を目指してます。

 研究員ともども、改めてよろしくお願いいたします。

 D環境造形システム研究所 渡辺菊眞

 

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2007年01月11日

d、、。

 みなさん、こんにちは。前回まで、いささかボリュームたっぷり過ぎて、胸焼けされている方々も多いのではないでしょうか?さてそんな方のために今回はボリュームダウンでお送りしたいと思います。でも味付けは胸焼けを誘う感じかもしれませんが、、、。「D」に関しての第二段です。Dの世界をDな言葉から眺めてみたいと思います。

D   
1.英語アルファベットの第4文字 2.4級(合格成績の最下位)

dance  
1.踊る,ダンスをする 2.跳ね回る,跳び回る,躍動する

danger
1.危険,危険な状態 2.危険な人(物)

dark
1.暗い,暗黒の 2.濃い,暗い感じの 3.暗黒の 4,秘密の

data
1.資料,データ

day
1.日、1日 2.昼間 3.時代

dear
1.親愛な 2.高価な

death
1.死 2.命とりになる物(事) 3.破綻,終わり

deep
1.深い 2.心からの 3.深遠な

delicacy
1.優美さ 2.敏感さ 3.微妙なこと

develop
1.発育させる 2.発達させる 3.(資源などを)開発する

dinner
1.ディナー 2.晩餐会

dramatic
1.劇の 2.劇的な

dream
1.夢 2.理想 3.夢見心地 4.美しいもの 5.夢のような


いちばんはじめの「Dってなあに」で、
http://dkenhokoku.seesaa.net/article/30664582.html#comment
Dとは、「何かをつきつめて、つきつめて、その果てにあるはずの、それでもやはり、掴みきれない、何か」というふうに定義しておりましたが、上のdで始まる単語たちを見て、ひとり勝手に納得してしまいました。ポジティブであれ、ネガティブであれ、これほど幅と奥行きのある単語を並べることが可能なのがDなのです(他のアルファベット検証したわけでないですから至極いい加減な話ではありますが)。

そして一見、双方対立して矛盾しそうな「夢(dream)」と「死(death)」などがそこに並んでいるさまは非常に興味深いです。Dでは、このような矛盾対立するような観念のどちらか一方を捨ててしまうのではなく、これら双方を包含し、最終的にはそんな対立を超えた別な地平にたつ世界を切り開いていきたいと考えています。それが僕たちが目指す「D」のある世界なのです。

 ああなんて素敵で不思議なD。

 D研究所が、決してD(=4級(合格成績の最下位))研究所とはならないよう、研究活動を続けてまいります。研究員一同(所長以外いつ姿をあらわすねん)精進いたしますので、何卒よろしくお願い申し上げます。






posted by 渡辺菊眞 at 21:01| Comment(0) | TrackBack(0) | D | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする